第16話
「お腹減りましたねー……ご飯ってもしかしたら、自分で取らないと駄目なんでしょうか……」
アウターに来た興奮で気にならなかったが、確かに結構腹が減っている。朝飯を抜いたのが原因かもしれない。
「自分で取るのはちょっと面倒だろ。食い物売ってる店とか、あるんじゃないか?」
「あったとしても問題はお金ですよー。元の世界のお金が使えるんでしょうかー」
それもそうだな。アウター独自の金があったら、それを手に入れないといけないけど、売れそうなのは今は持ってない。
とりあえず元の世界の金が使えるかもしれないので、ファースト・シティにある店を探してみることに。
一度中央広場に行って、地図を見てみた。中央広場には、
食料は売ってあった。案外元の世界にある物と変わらない。鶏肉や牛肉のような肉類や、トウモロコシ、トマトのような穀物、それからパンも売ってある。
「結構ありますねー。これは元の世界から持ち込まれたものなんでしょうかー?」
「どうだろうな。引退した冒険者が、農業始めたとかもあるかも」
まあ、どうやって取ったもんかは、どうでもいい。
持っている金が使えるかどうか、市場の人に尋ねてみた。
どうやら、この町には独自の貨幣があるらしい。それじゃないと買い物は出来ないそうだが、両替することも出来るため、手に入れることは可能なようだ。
両替をしている場所を聞き、俺たちはそこに行って両替をした。
ファースト・シティの貨幣は、ルバと呼ばれていた。青い色の謎の金属で出来ている。余っていた金を全部両替して、100ルバ手に入れた。五日間くらいは、飲み食いに困らない金額らしい。セリアは30ルバを手に入れたようだ。
「ブロズとシラファは、両替しなくていいのか?」
「俺、前の世界の金持ってきてなくてさ……」
シラファは理由を答えなかったが、恐らくブロズと一緒だろう。旅費で全部消費したようだ。
「こういう時は助け合いですー。食べ物奢りますよー」
「そうだな」
「いいの?」
「食い物なかったら動けなくなっちまうだろ? そうなると一緒に戦うこっちが困るしな」
「ありがとう……」
ブロズは感動したように言った。
俺たちは市場で四人分の食料を購入した。
パンや干し肉など、料理せずにそのまま食べられるものを優先した。
持っていたルバ全部を消費した。今日食べる分に加えて、これからからくりの塔へと行くので、数日間分の食料もあった方がいいと思い、そのための食料も買っておいた。
俺とブロズとセリアが、食事をするが、シラファは食べようとしない。
「シラファさんお腹減ってないんですかー?」
「私は他人からの施しは受けない」
相変わらず気難しい性格の奴だな。
食っても損するわけでもあるまいに。
そこでシラファの腹の音がなった。クーという可愛い音だった。
いつも無表情のシラファだが、流石に恥ずかしかったのか、顔を赤くする。
「ほらー、お腹空いてるんなら食べたほうがいいですよー」
「……」
シラファは、セリアを睨み付けるが、空腹が我慢できなかったようで、パンと干し肉を取って食べた。
「……借りは必ず返す」
イラついたような表情で、シラファはそう呟いた。
「さて飯も食ったし、早速からくりの塔に行ってみっか」
「ですねー。中央広場にある地図で、からくりの塔の場所を調べましょう」
俺たちは中央広場に行って、からくりの塔の場所を調べた。
南西方向にあった。結構近いところにあるようだ。恐らく歩いて三時間ほどで到着するだろう。小悪魔の森は北西に、目覚めの神殿は北にある。どちらも端っこにあり、行くには一日以上かかりそうだ。
場所を確認して、早速向かおうとしたとき、声をかけられた。
「君たちルーキーだろ。からくりの塔へ行くんなら、俺たちも連れていってくれないか?」
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