第二章 からくりの塔

第15話

 聞きたいことは聞けたし、お礼を言ってその場を後にしようとすると、元冒険者の男が、俺たちを呼び止めてきた。


「ちょっと待て、そういやぁお前ら、これからどうするかとか、決めてんのか?」

「これから……ですかー?」

「どうするって言われてもな……またどっか別のレッドエリアに行くとか、試練があるとか言ってたから、そこに行くとか」


 具体的な方針はまだ決まってないが、俺としては中央広場にある門を通れるようになりたいので、試練をクリアするのが目標になる。


 試練に挑むために、魂力を集めて強くなった方がいいのなら、集めてから行った方がいいだろう。


「試練についての説明は受けたか?」

「いや、町長はあとで話すって言ってた」

「そもそも試練って何なんですかー?」

「試練ってのは、特定のレッドエリアを踏破すると、受けることが出来るんだ。試練で試されるのは、力だったり、知恵だったり、技量だったり色々だ。どの試練が来るかは、受けてみねーと分からねー。

 それぞれのワールドには三つ試練があって、全部クリアすると次のワールドへ行くための門を通れるようになる」

「その特定のレッドエリアってのはどこなんだ?」

「この緑の世界グリーン・ワールドにあるのは"からくりの塔"と"小悪魔の森"と"目覚めの神殿"だ。目覚めの神殿はほか二つをクリアしなければ、入ることが出来ない。最初に行くのはからくりの塔をおすすめするぜ。小悪魔の森は、難易度が高いから、最初に行ったらやられちまうだろう」


 名前だけ聞くとからくりの塔の方が難しそうだと思ったが、意外と小悪魔の森の方が難しいのか。


「じゃあ、からくりの塔に行くか」

「ですねー。どこにあるんですかー?」

「場所は中央広場の地図を見ればわかる。もう一つアドバイスしておくが、試練のあるレッドエリアには、入れる人数が決まっている。最低四人、最高六人だ。そんで一度クリアした奴は入れねーから、ベテランに助けを求めたりするのも不可能だ。なるべく六人いた方がいいけど、からくりの塔は四人でも大丈夫だと思う」


 試練のあるレッドエリアにも、人数制限があったのか。このメンバーのまま行った方がいいだろうか。問題児が一人いるけど。


 その問題児は、人数制限があると聞いて、見るからに不機嫌そうになっている。どうも一人で行動したかったようだが、これではそれも難しいだろう。


「じゃあ俺は用事があるんで、頑張れよ」


 男がそう言って去っていったので、改めて俺はお礼を言った。



「色々話が聞けましたねー。親切な人でしたー」


 確かに初対面の俺らに、あそこまで詳しく話してくれるのは、非常に親切だ。全員が全員、あの人みたいじゃないだろうし、運が良かったんだな。


「それでー、えーと、試練を受けるには、四人以上いないと無理っぽいんですのでー、引き続きこのメンバーでやっていくってことでいいですけねー?」

「俺は良いと思うぞ。案外バランスも良いと思うし」

「うん、俺も良いと思う。だけど……」


 俺、ブロズ、セリアが同時にシラファを見た。


 この女がどうするかは分からない。

 ただ現状、一緒にいる以外選択肢はない気がする。


「……ふん、まあいいだろう。お前らも雑魚じゃないから、足を引っ張ったりはしなさそうだからな」


 相変わらず上から目線で、感じの悪い奴であるが、シラファもしばらく同行するようだ。

 性格はあれだが腕はあるので、何だかんだ言っていてくれた方がいいだろう。


 こうして俺たち四人は、しばらく一緒に行動することになった。

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