第12話

 いいとこどりされた感じはあるが、巨大蜘蛛を倒すことは出来た。


「い、一応言っときますけど、わざとではないですよー。スレイさんが頑張ってたんで援護しようとしたんですー。まさかとどめを刺してしまうとは」


 セリアが弁明をしてきた。

 わざとではないのは間違いだろうし、そもそも仮にわざとでも、止めを刺せなかった俺が悪いだろうから、批判する権利はない。


「ってか、さっきので器がもう一個いっぱいになったっぽいです。また強くなりましたねー」


 今度は上機嫌に自分の能力向上を試すよう、飛んだり跳ねたりし始めた。確かにかなりジャンプ力が上がっているようだ。この部屋の天井は結構高いのだが、当たりそうなくらいジャンプしている。


 セリアは、小さい蜘蛛はそんなに倒していなかったが、巨大蜘蛛を倒しただけで、器がいっぱいになった。モンスターの種類ごとに吸収できる魂力は違うようだ。


「おい、ところでこれはどうするんだ?」


 珍しくシラファが自分から発言をした。


 これって何だ? 


 そう思って視線をシラファのいる場所へと向けると、彼女の足元に複数の石が散らばっていた。

 例の紫の石が四つと、それから赤い石と白い石がそれぞれ四つあった。


 ブロズがそれを見て、疑問を口にする。


「紫の石は何か役に立つって話だけど、白いのと赤いのはどうなんだろう?」

「うーん、分からんな。でもこれ巨大蜘蛛の死体から出てきたんだよな。なら、一応持っておいた方がいいと思う。帰ったら町長に尋ねよう」


 石は拾う事に決まった。


 ちょうどそれぞれの石が四つずつあったので、四人で一個ずつ持つことになった。


 それから先に進もうと思ったら、門があった。


 これもまた遺跡で見た門と酷似している。


 扉は開いていた。


「これこの部屋に入った時ありましたっけー?」


 そう尋ねられるとなかった気がする。


「巨大蜘蛛を倒したから出現したのか?」

「どうでしょうねー。とりあえずここはいれば先に進めるってことでしょうかー。入ってみましょうー」


 俺は頷いて、先に門を通った。



 ――――ん? あれ?



 気付いたら草原に立っていた。キョロキョロと回りを確認してみると、初心者の洞窟の入り口があった。


 シラファとセリア、ブロズも少し遅れてくる。


「あれー? ここって入り口じゃないですかー」

「あそこで初心者冒の洞窟は終わりで、門を通ったら戻るってことだったんだ」


 ブロズが納得したように呟いた。


 あそこで終わりだったのは少し残念だな。もう少し強くなった自分の体を試したかったんだけど。それは次の機会に持ち越しだな。


 とにかく一旦町に帰るか。あの石の正体が何なのかとか、俺の器の事とか、聞きたいことは色々あるからな。


「あ、シラファさん待ってくださいよー!」


 一人でシラファが町に帰っていったので、セリアが追いかけた。どうやら、一人では入れない初心者の洞窟を出たから、もう俺たちと付き合う必要はないと思っているようだ。

 セリアは、出た後も仲良くしたいと考えているようだけど。


「俺たちも町に戻るか」

「そうだね」


 俺たちは一旦町へと戻った。



 少し歩いてファースト・シティに到着。


 シラファはセリアにしつこく付き纏われて、振り切るのを諦めたようだ。俺たち四人はほぼ同時に帰還した。


 分かんないことがあれば、その辺の冒険者に尋ねろと、レブロンに言われてたな。でも、本当に教えてくれるのだろうか。


 ちゃんと教えてくれる人もいれば、そうじゃない人もいるだろうからな。


 レブロンに聞くのが一番いいんだろうけど、町長だけあって、結構忙しかったりするのかもしれない。彼の言葉通り、その辺の元冒険者の人に尋ねてみるか。


「あのー、この石に付いて教えてほしいんですけどー」


 俺がそう思っていたら、セリアが先に背が低めな中年の男に話しかけた。


「おめぇら新人か。はっはっは、若くていいなぁ。そいつは魂石こんせきさ。食えば魂力が溜まるぞ」

「えー? これ食べられるんですか?」


 それは俺も予想外だった。全く食べられそうに見えない物質だ。匂いも特別しないし。


「口に入れたら吸収されるんだ。味はしねぇよ」

「そうなんですかー。これ色は何か意味があるんですか?」

「めちゃくちゃある。赤を食べたら、『スキル』を身に着けることが出来て、紫を食べたら、『魔法』を身に着けることが出来る。白はただ魂石が溜まるだけだ」

「へー、魔法とスキル……魔法は何となく分かりますが、スキルって何ですか?」

「ちょっと説明し辛いが、スキルってのは特殊な能力って奴だな。『自然回復』とか、『虫特攻』だとかか。自然回復は、怪我がちょっとずつ自然に治る能力で、虫特攻は、虫系モンスターに与えるダメージが増える。そんな感じの特殊能力が赤い魂石を食べたら付くんだ」


 魂力を吸収した上に、魔法とスキルを習得するか。思ったより有用な物だったようだ。持ってきて良かった。


「ちなみにどんな魔法かスキルが習得できるかは、ランダムで分からねー。見る奴が見れば、分かるらしいがな。ただ、お前らの手に入れた魂石が、初心者の洞窟の蜘蛛から手に入れたもんなら、魔法に関しては器の数を測る『サーチ』を習得すると思うぜ。スキルはランダムだろうが、そんなに強いのは身に付かねーだろうな」


 蜘蛛から出たものはサーチなのか。


 とにかく食べてみよう。

 俺は袋から魂石を取り出した。まずは白い魂石を口に入れてみる。


 口に入れた瞬間、光って消滅した。これで吸収されたのだろうか


 ほかの魂石も食べてみる。

 元の世界で冒険者の男から貰った紫の魂石と、巨大蜘蛛から手に入れた紫の魂石は分けて入れていたので、どっちかどっちかは分かる。まずは、蜘蛛から手に入れた、紫の魂石を口に入れた。


 白いのと同じく、入れた瞬間光って消滅。

 そのあと、


『魔法、サーチを習得した』


 と頭の中に直接声が響いてきたので、俺は驚いた。誰が言ってるんだろうか。もしかして器がいっぱいになった時に聞こえる声も、同じ声なのだろうか。


 多分これで器の数を測るサーチを習得できた。


 どうやって使えばいいか分からないな。まあ、そんなに人の器の数は知りたくないので、どうでもいいけど。


 赤い魂石を食べたら、『スキル、炎耐性1を習得した』と聞こえた。炎に強くなるスキルか? 火を使ってくる敵と戦う時は有効だな。


 最後に冒険者の男に貰った魂石も口に入れてみる。


 思い出の品なので、大事に取っておきたくもあるが、使い方があるのなら、あの男も吸収するのを望んでいるだろう。


 躊躇なく俺は紫色の魂石を口に入れた。


『魔法、ブルースターを習得した』



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