第10話

 順調にモンスター達を倒しながら先に進む。


 今まで見たモンスターは、四種類。


 最初に見た四腕の猿に、角のある大型の一つ目猫。


 そのあと、人型のネズミっぽい奴と、人型の植物も見かけた。どれもあまり強くないので、倒すのは楽勝だった。


 どれも奇妙な生物で、気持ち悪くもあり、面白くもあり、俺の想像していたアウターのモンスターとは少し違っていた。


 あいつらにも、名前とかあるのだろうか。誰か付けてるとは思うが。

 今度モンスターの名前を、調べてみてもいいかもしれないな。


 洞窟は結構深く、だいぶ歩いたが、道自体は別れ道が一切ない一本道だった。


 そんなに強くないモンスターを、倒しながら歩いていけばいいだけなので、そんなに苦労はしない。


 それにしても、結構長く歩いたはずなのに、大して疲労が溜まっていない。汗も全くかいてないくらいだ。


 俺以外も涼しげな表情で歩いている。

 俺、シラファ、セリアは軽装なのでまだわかるが、重そうな鎧を着たブロズも、全然平気そうだ。魂力はスタミナも上げてくれるのだろう。


「スレイさん見てくださいー」


 セリアがそう言ってきたので、見てみると、なぜかセリアが大きな岩を両手で持ち上げていた。


「凄くないですかー。めっちゃ力持ちになりましたよー。これなら、弓の力も凄くなってて、岩でも打ち抜けるようになっちゃてるかもしれませんー」


 セリアも魂力の力を肌で感じているようだった。


 シラファは冷ややか表情でセリアを見て、ブロズは「俺は前から持てたかも……」とボソッと呟いていた。流石にあの岩を素で持ち上げられる奴はそうはいまい。俺もたぶん無理だ。ブロズが例外だというのは、体格を見れば一目瞭然だった。


 セリスが調子に乗って、岩を上げ下げしていると、いきなり岩が動き始めた。気になったセリアが岩の様子を見る。

 すると、


「ひゃあ!」


 と悲鳴を上げて、岩を放り投げた。

 俺の方に飛んできたので、慌てて避ける。


「あ、危ないだろ! 何しやがる!」

「そ、その岩……目が!」

「はぁ? 岩に目なんか……」


 そう思って岩を確認すると、いきなり足が生えて、それで立ち上がり、腕も生えてきた。

 そして、セリスの言った通り、大きな目が二個付いている。


 どうやら、モンスターだったようだ。


 岩でできたモンスターなんて、剣が折れそうで攻撃したくないんだけど。俺は攻撃するのを若干躊躇した。岩モンスターは、体当たりをしてきた、回避したが、その必要なかったようだ。


 ブロズが盾を構えて、岩モンスターを受け止めた。そのあと、自分の剣を力強く振り、粉々に岩を砕いた。


 岩モンスターは、魂力となりブロズに吸収される。


「びっくりしましたー……あんなモンスターもいるんですねぇ」

「らしいな。やっぱ面白いところだなアウターは」

「えー? 驚いただけで、面白くはないですよー。これじゃあ、うかつに何か触ったりできないですよー」


 確かにそれはそうである。岩だけでなく、草とか木とかも、気軽に触ったりはしない方が良さそうだな。


「あれ? 何かある」


 ブロズがふと呟いた。彼の視線は地面に向いている。

 しゃがんで何かを手に取った。


「何だろこの紫の石……」


 ブロズの手には紫色の石があった。


 あれ? これって……


 俺が五歳のころ冒険者の男に貰った石に似ているな。


「何か不気味な感じがする石ですねー……捨てたほうがいいじゃないですかー?」

「そうかも」


 セリアが提案して、ブロズが捨てようとしたので俺は慌ててそれを止める。


「捨てちゃ駄目だ。その石は良いもんかもしれない」

「どうしてそう思うんですかー?」


 セリアに尋ねられたので、俺は理由を話した。


「はぁー。冒険者の人に聞いたんですかー。何で必要かは聞かなかったんですか?」

「そこまで詳しくは教えてくれなかったんだ。でも持っていた方がいいと思うぜ」

「そうだね。小さいし荷物にはならなそうだし。持っておくよ」


 ブロズは謎の石を腰につけていた袋に入れた。


 そのまま先に進む。相変わらず一本道で、分かれ道はない。


 モンスターも順調に倒していった。


 ここまで倒したモンスターは俺が三十二体である。まだ器はいっぱいにならない。


「おい、お前、何体モンスターを倒した?」


 シラファが尋ねてきた。

 競争してたなそう言えば。途中から身体能力が上がっていくのが楽しかったから、忘れてた。


「三十二体」

「……なら私は三十三体だ」

「ならって何だ! 嘘ついただろ! 本当の数字を言え!」

「本当のところ、数えてない。ただ間違いなくお前よりは多い」


 こいつ絶対俺より少ないだろ。先に数を尋ねてきて、自分の倒したモンスターを数えてないとは思えない。


 どんだけ負けず嫌いなんだと思った。別にこの洞窟の敵は弱いから、多く倒したってことはそんな誇ることでもない気がするが。


 そんな会話を交わしながら歩いていたら、扉があった。


 何だこの扉。ここ自然にできた洞窟じゃなかったのか?


 扉には、『力なきものには死あるのみ』と不穏な言葉が書かれている。


 何かやばそうな雰囲気を肌で感じる。だが、それ以上に、先に何があるんだと、知りたいという欲求も強く感じていた。


「この扉の先は何かやばそうだけど、覚悟は良いか?」


 俺がそう尋ねると、シラファは「愚問だ」と答え、セリアは強張った顔で「は、はい」と答え、ブロズは顔を青くしながらも無言で頷いた。


 三人の意志を確認した後、俺は扉を開けた。

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