第7話
初心者の洞窟に入るには最低四人必要だという事で、一緒に行く仲間たちを探さないといけない。
全員で一緒に入れば良いのではと思ったが、人数が多すぎると連携が取り辛いし、自分勝手な奴が多そうな冒険者では、人が多すぎると逆効果になる可能性が高い。四、五人くらいがベストなんだろう。
俺も仲間を探さないと。
最初にセリアが、
「スレイさんー。洞窟一緒に行きましょー」
と誘ってくれたため、俺は快く受け入れた。
すぐ仲間出来て、幸先は良かったがそのあとが良くなかった。
器の数が少ないというのは、マイナス要因にならないと思っていたが、意外となったようで俺はほかの初心者冒険者たちから、だいぶ下に見られていた。
弱い奴と組む気はないと、断られ続ける。
最終的に、俺はセリア以外の仲間が作れず、ほかの者たちはダンジョンに向かい、取り残されてしまった。
「こ、これはまずいですよー。二人じゃ入れませんよー」
「むぅ……」
このままではまずい。初心者の洞窟に出てくるモンスターは弱いって言ってたから、まずはそいつらを倒して魂力を集めないと、ほかの場所のモンスターに勝てないかもしれん。
焦った俺は周囲を確認した。
よく見たら、俺たち以外に余っている奴がいる。
黒髪の女シラファと、鎧を装備した大男ブロズだ。
納得と言えば納得のいく二人だ。
一人は他人を徹底無視している奴で、もう一人は他人から怖がられて避けられてる奴だからな。
器の数が多くても、仲間を作ることは出来なかったようだ。
まずはブロズに話しかけてみた。
「一緒に洞窟行かねーか? 二人しかいないから、このままじゃ入れなくて困ってたんだ」
ブロズは鋭い視線を俺に向けてきた。声をかけられて、驚いているように見える。
「……行ってもいいの?」「もちろんだ」
「……喜んで行かせてもらうよ。話しかけられなくて、困っていたところだったんだ」
少し話しただけだが、見た目ほど変わった性格ではなさそうだ。普通の奴に思える。
「よ、良く声かけられましたねあの人に」
ブロズに聞こえないよう、セリアは小声だった。
「お前が思っているほど、やばい奴じゃなさそうだぜ。たぶん普通の奴だ」
「そ、そうなんですか?」
疑いの眼差しで、セリアはブロズを見る。
「とにかく一緒に洞窟に行くことになったから、あんまり邪険にしてやるなよ」
「う……ま、まあそうですね……人を見た目だけで判断するのはよくないですし……しかし……」
どうしてもセリアはブロズが怖いようだった。どこか怯えたるように、ブロズを見ている。
俺もちょっと会話しただけだし、本当にまともな奴かは分からないが、そんなにビビることもないと思うんだがな。
あとはシラファだが……さっきから微動だにせず、ただ突っ立っている。四人いないと初心者の洞窟に行けないってこと、もしかして聞いていなかのだろうか。他人を平気で無視するような女だし、町長の話も右から左に受け流していたのかもしれない。
「ここはわたしがシラファさんを誘ってきます!」
一度無視されたのにも関わらず、セリアはシラファに話しかけに行く。中々の精神力の高さだ。
内容は聞こえないが、今度は無視はされいないようだ。相変わらずシラファは無表情なので、話は弾んでいなように見えるが。
しばらくすると、セリアとシラファが一緒にこちらに来た。
「今度は無視されませんでしたー。仲間になってくれるんだそうです~」
仲間になるのか。自分から仲間を作ろうとしなかったのは、話を聞いていなかったらではなく、ポリシーの問題か何かだったようだ。
「仲間になるのではない。状況的に仕方ないから一緒に行ってやるだけだ。足を引っ張るなよ」
冷たい視線を俺たちに向けて、そう言ってきた。
シラファの態度が、あまりにもデカかったので、流石にイラっと来た。
「俺こんな態度の奴と上手くやっていける自信ねぇんだけど」
「上手くやっていく必要などない。貴様は私が戦うのを後ろから眺めているだけで問題ない」
こいつ……
口を開くたびに、人をイラつかせるような事を言いやがる。
無口な奴であったが、喋ったらこんなムカつく奴だったとはな。
「シ、シラファさん。これから仲間になるんですから、あんまりそう言った発言は控えていただけると……」
「仲間になる気はないとさっき言っただろう」
シラファは自身の発言を謝罪したり、直したりする気はないようだ。
正直イラっとするが、四人いないと入れないとなると、こいつの存在は必須だ。ここは我慢しよう。
ただ初心者の洞窟で戦いになったら、こいつの手助けはしてやるもんかと、心に決めた。
「……一応人数もそろったし、さっさと初心者の洞窟に向かうか」
「そ、そうですねー。地図は広場にあるって町長は言ってましたね。あ、もしかしてあれですかー?」
セリアが地図を発見した。
確認してみると、初心者の洞窟はこの町の南にあるようだ。
場所が分かったので、早速俺たちは初心者の洞窟へと向かって出発した。
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