第2話
部屋に戻って、俺は急いで準備を始めた。
大きな革袋に、着替え、路銀、食料などを詰める。門のある遺跡までは結構遠いので、準備は万全にしないとアウターに行くまでに、野垂れ死んでしまう。
あと、剣を持っていかないとな。
アウターは危険な場所らしいし。
剣術だけはきちんと勉強したので、それなりに剣の腕はあるつもりだ。
剣を集めるのが趣味の俺は、質の良い剣を何本か持っていた。お気に入りは、国一番の名匠が作った片手剣だ。見た目は地味だけど、切れ味や頑丈さは所持している剣の中でも一番。追放されるとなると、この一本以外は、持っていけないのは少し悲しいが、アウターへ行けるというのなら諦めも付く。
俺はその剣を手に取り、腰にかけた。
それから……あれも持っていかないとな。
冒険者の男から貰った紫の石をポケットにしまった。
王城にいる人たちも石の正体は知らなかったため、これが冒険者に関する物であるということで、取り上げられたりはしなかった。絶対になくすまいと、今まで大事に保管していた。
小さいから、旅の途中、なくさないよう気を付けないとな。
準備も出来たし、出発するか!
俺は革袋を背負おうとして、出発したら二度ともうここには帰って来れないかもしれないと気づいた。
退屈な場所だったし、最後には追放されたが、それでも生まれ育った場所だ。ここまで育ててくれた恩もある。せめて置き手紙でも残して出よう。俺は部屋にある棚から、羊皮紙と羽ペン、インクを取り出して、別れの言葉を書き残した。
これでいいだろう。
短いけど書きたいことは書き残せた。
机の上に手紙を置く。
よし、気を取り直して出発だ!
俺は革袋を背負い、部屋を出た。
〇
王城を出た後、城下にある町まで行き、馬車を探した。
門があるバルツ王国は、この国の隣国だ。それほど遠くはないので、バルツ王国行きの馬車があるはずだろう。
探したら予想通り見つかったので、持ってきた金を払い、馬車に乗せてもらった。
途中で馬車が盗賊に襲われる何て事なく、無事にバルツ王国の王都まで到着した。王都の南西に、門がある遺跡があるという。遺跡の近くには、小さな町があるので、王都でそこまで行く馬車を探し出し、再び馬車に乗せてもらう。
何十年と夢に見てきたアウターに行ける日が、すぐ近くまで迫っていると思うと、そわそわして落ち着かなかった。
そんな気分で二日間馬車に揺られ続け、ついに遺跡の近くにある町へ到着した。
遺跡がどこにあるか街の人に尋ねると、「門が開くのは明後日だよ」と返答された。
「開く時間があるのか?」
「月の最初の一日じゃないと門は開かないよ。アンタ知ってて、月末にこの町に来たんじゃないのかね」
し、知らんかった。今日は三月の二十九日ということで、明後日が四月の一日という事だ。もうちょっと遅れてたら、長い間待たされることになっていた。
王城ではアウターの知識を調べるのも難しかったから、門とアウターに関する知識はそんなに持ってないんだよな。知らないことが多いからこそ、行ってみたいんだけど。
金はまだあるし、今日と明日は宿に泊まって待つとするか。
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