ハムの地位を向上させ隊

人間たちの社会でひっそりと暮らすハムたち…。

そのハムたちのために、立ち上がる者たちがいた…。


その名も“ハムの地位を向上させ隊”!!


ぽぽ隊長「やぁ、私は“ハムの地位を向上させ隊、隊長のぽぽだ! 皆はそもそも“ハム”について知っているか? まぁ、ひっそり暮らしている我らを知らない者も多いだろう。“ハム”とは、人間たちの社会で暮らす資格を得て、ことばを話すこともできるハムスターたちのことである。ほとんどのハムたちは、ペットとして飼われて暮らしている。飼い主さんに言葉を話せることを伝えているハムはわずかだろうがな。そこでだ、私たちはこのハムたちを代表して、ハムの地位や権利の向上のために活動をしている」


すみれさん「隊長! 出動要請がありましたので、行って参ります! あ…お話中失礼しました。私、副隊長を務めます、すみれと申します。これからペットとして生活されているハムさんの元へ向かいます」


ぽぽ隊長「了解! それでは、直接目にするとわかりやすいと思うので、ぜひ共に出動してみてください」


すみれさん「では、行きましょう!」




すみれさん「こんにちは、ハムの地位を向上させ隊です。今回は食事が満足に与えられていないとのことでしたが、この要請であっていますか?」


ペットハムさん「はい…。最近、1日食事をもらえないことがあって、忘れられてしまっているのだろうと我慢していたのですが、今回は今日まで3日ももらえていなくて…」


すみれさん「まぁ…、お辛いでしょう。こちらの種をどうぞ。では、飼い主さんに食事を与えてもらえるよう交渉するということでよろしかったですか」


ペットハム「ありがとうございます。はい、そうです」


すみれさん「ちなみに“ハム”であることは伝えていますか?」


ペットハム「いえ。ハムスターとして生きています」


すみれさん「わかりました、お任せください!」




飼い主「ただいま〜…って誰に言ってんだろう。…あれ? ユキ? ユキ…!!」


ペットハム“ユキ”(よろよろ起き上がる)


飼い主「あ…ユキのご飯…。私何やってたんだろう…。ユキこれご飯だよ! 食べて…!」


ユキ(のそのそ動き、食べる)


飼い主「よかった…。食べても調子悪かったら病院行こうね。ユキ…本当にごめんね…」



すみれさん「ユキさんの飼い主さんは本当はハムスターが大好きな方なんです。ただ、仕事でお疲れのようで…。そこで、今まで心配をかけないよう元気に振る舞っていたユキさんには腹ペコを表現して頂きました。飼い主さんに事情があっても、ペットとして過ごす皆さんには食事は命に関わることですから」




すみれさん「次は、工場に向かいます。最近、劣悪な環境でハムたちに作業をさせている工場があるという情報が入ったので」


すみれさん「あそこです」


工場長「なんだい、姉ちゃん。今はバイトは募集してないよ」


すみれさん「私はハムの地位を向上させ隊の副隊長です。バイトではなく、御社の労働環境についてお話に伺いました」


工場長「労働環境だぁ…? 俺は働きたいハムたちに仕事を与えてやってるんだぞ?」


すみれさん「種、または、金銭による給与がとても低いと聞いています。そして、休憩もほとんどないと…。それから…」


工場長「はいはいはい。お嬢ちゃん、よく聞きな? 俺たちニンゲンとお前たちの行動スピードは全く違うわけ。だから、同じなんて無理なわけ。わかるかな〜?」


すみれさん「ですが…。そ、それにしても給与は低いと聞いています」


工場長「はぁ…。俺だってハムたち皆解雇して、ニンゲン働かせることもできるわけ。とっととお家に帰りな!」


すみれさん「…! きょ、今日は帰りますが、また来ます」


工場長「もう来んなよ〜」




すみれさん「すみません…。先程のように仕事場はペットより難しい現状です。確かにペットでも厳しい現状におかれることもあります。ただ、働きたいと夢を追うハムたちがもっと素敵な環境で働いてほしいのです…。今日は難しいですが、少しずつ変えていきたい…いや、変えていきます! それでは…今日は帰りましょうか」




自営ハム「お弁当いかがでちゅか〜 今日は唐揚げ弁当がお得でちゅ!」


すみれさん「…! 見てください。あの方のように自分でお店を出し、ニンゲンのお客様もいるハムのお店もあるんですよ!」


自営ハム「あ、ハムの方でちゅか? お弁当いかがでちゅ? ハムサイズもご用意できまちゅ!」


すみれさん「…では、ハムサイズの唐揚げ弁当を5つとニンゲンサイズ1つお願いします」


自営ハム「かちこまりまちた!」


すみれさん「うふふ、ハムの地位を向上させ隊メンバーとあなたに奢りよ」


自営ハム「こちらでちゅ!合計、1200円でちゅ! …あ! 支払いは種でちゅか?」


すみれさん「いえ、お金でお願いします」


自営ハム「かちこまりまちた! ちょうどおあぢゅかりちました! また来てくだちゃい!」


すみれさん「えぇ、また来ます」




今日もハムの地位を向上させ隊の皆さんは、たくさんのハムたちのために戦うのであった…。

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1話完結のお話 〜オリオンワールド〜 オリオン @orion-ringo

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