アニマルスーパーの新人さん

僕はチュー太郎、ねずみです。今日はアニマルスーパーでアルバイトをさせてもらいたいと思って来ました。


「いらっしゃいませー」


「あ、僕アルバイトのめんせちゅ…面接に来た者です!」


「うふふ、面接の方ね。こっちに来て、店長〜!!」

なんだか笑われちゃった。綺麗なうさぎさんだなぁ。この人とも一緒に働くことになるのかな。


「はいはーい。あ、君かぁ! よろしくねぇ、こっちで面接するよ!」

わぁ、大きなライオンさん。この方が店長さんかぁ、かっこいい人だなぁ。


「よろしくお願いしまちゅ…します!」




「お名前はー?」


「鈴木チュー太郎です!」


「年齢とここで働きたい理由を教えてー」


「16歳で、えっと…お母さんのために働きたいです!」


「おぉ? 働くのにこの店がいいなって思った理由をお願いできる?」


「あ!」

間違えた…志望理由ってやちゅか!


「すみません、あたたかい雰囲気のスーパーでお客様のために仕事をしたいと思ったからです!」


「いいねぇ、いつから働ける?」


「今日からでも!!!」


「ハッハッハー! よし、じゃあ明日から来てくれるかい?」


「はい…!」

やったぁ、アルバイト合格だぁ!!


「言いたくないことだったらいいけど、お母さんのために働きたいって言うのは?」


「僕のお家、お母さんが1人で育ててくれたからお金があまりなくて。大人になったらお母さんが好きなものを買ったり、好きなことをできるようにアルバイトがしたかったんです!」

お母さん、僕頑張るからね!


「うっうっうぅ」


「あれ…て、店長さん!?」

泣いてらっしゃる、どうしたんだろう。


「いい子だねぇ、君の気持ちに感動しちゃったよ。頑張って働いてねぇ」


「はい!」


店長さんはいい人みたいだなぁ。




今日からアニマルスーパーでアルバイトだー! 頑張るぞ!


「あ、チュー太郎くん。早いね、おはよう」


「おはようございます! 今日からよろしくお願いします!」


「はい、よろしくね。じゃあ、皆に紹介するからね」


「…はい!」

一緒に働く皆さん、仲良くなれるといいな。


「こちらがぴょん子さん」

あ、昨日の綺麗なお姉さんだ。


「あら、昨日会ったわね。よろしくね〜」


「よろしくお願いします!」


「こちらが梅吉さん」

わぁ、梅吉さんはカメさんなのかぁ。


「よろしくねぇ〜。わからないことは聞くんだよぉ〜」


「はい! よろしくお願いします!」

おじいちゃんみたいで優しそうだなぁ。


「こちらがトメさん」

トメさんもカメさんかな。


「よろしくお願いします〜」


「よろしくお願いします!」


「今日のシフトはこのメンバーだから、また今度他の皆さんは紹介するね。そして、最後に私は店長のガオ造です。よろしくね」


「よろしくお願いします!」

店長さんはガオ造さんなのか〜。名前もかっこいいなぁ。


「仕事は皆で少しずつ教えていくから慣れていってね」


「はい!」

初めての仕事…緊張しちゃうなぁ。




「チュー太郎くんは今日は、この秋のキャンペーンケーキを宣伝してくれるかな」

“本日限定 秋のキャンペーンケーキ”…美味しそう。


「はい!」


「最初は中でお客様にオススメしたり、注目してもらったりしてみてね。わからないことがあったら、あっちにいるから声をかけてね」


「わかりました!」

ケーキ…たくさんあるなぁ。全部売って売って売りまくるぞ!!




「いらっしゃいませ、お姉さん! こちら本日限定のケーキです。おひとついかがですか?」


「あらぁ、お姉さんなんて…。うふふ、ひとつ頂こうかしら!」


「ありがとうございます!」

やったぁ、ひとつ売れたぞー!




「かわいらしい店員さんねぇ、新しい方かしら?」

猫のおばあちゃんが話しかけてくれた。


「はい、新人の者です! かわいらしいなんて…ありがとうございます。こちらのケーキいかがですか?」

僕、かわいらしいなんて初めて言われたなぁ〜。


「あら、素敵ねぇ。久しぶりにおじいさんと食べようかしら」


「ぜひ!」


「うふふ、おひとつくださいねぇ」


「はい! ありがとうございます!」

やったぁ、買ってもらえてよかった〜! おじいさんとかぁ、仲良しなんだなぁ。




「店長さーん!!」


「お、チュー太郎くん。どうしたのかな?」


「あの、ケーキの在庫ってまだありますか?」


「ん? 在庫…まだあるけど。陳列分がなくなったら並べようね」


「あの…なくなっちゃって?」


「へ!? 落としちゃったとか?」


「いえ、皆さんが買ってくださって」


「皆さん…。おぉぉ、お客さん皆の買い物カゴにケーキ…。チュー太郎くん、君すごいね!!!」


「いえ、ケーキが美味しそうだからで…。それで、在庫は…?」


「こっちにあるよ! でも、もうそんなにないから…急いで作ってもらうね!」


「ありがとうございます…! 僕頑張って売りますね!」




「チュー太郎くん! 今日すごかったわねぇ〜!」

ぴょん子さんに褒めてもらえた、嬉しい。


「ありがとうございます、ケーキが美味しいからだと思います」


「あら、嬉しい〜! チュー太郎くんは食べた?」

あのケーキはぴょん子さんが作ってくれていた。


「…売り切れちゃったので」

食べてみたかったなぁ。ガオ造さん、毎年余ってるって言ってたのになぁ。


「うふふ、はい」


「え?」

あれ、ケーキだ。


「チュー太郎くんが欲しがってたって店長に聞いたのよ」


「ありがとうございます! 家族で食べます!!!」

美味しそうなケーキ、お母さんも弟たちも喜ぶぞ!


「うん、感想聞かせてね?」


「あ…でも」

そうだ、僕にはこのケーキは買えない…。


「もしかして、お代のこと気にしてる?」


「はい、お金が…なくて」


「うふふ、これは店長と私からの新人さんへのプレゼントだから気にしないで!」


「え! いいんですか! わぁ〜、ありがとうございます!」



素敵なあたたかいアニマルスーパーにやってきたかわいらしい新人さんはこれからもずっとこの店で働き続けます。

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