なんだかご主人に飼われているらしい猫のお話。
いや言うほど猫ばっかりでもないというか、猫から始まりその周辺の人々にどんどんフォーカスが移っていく感じのお話です。ジャンルとしてはミステリで、しっかり謎を提供してくれるのですが、その趣向というか流れが印象的でした。
最初の猫のふわふわした語り口もあり、序盤のうちは柔らかな日常の光景が続いていくのですが、そのうちに「なんだろう?」と思わせる描写がちらほら顔を出し、そして気づけばすっかりとんでもないところに着地している、という構成。最後まで読み終えたときには「おおーそういうこと!」と膝を打つような思いで、つまりしっかり丁寧に練られたお話でした。
このさっきあげた「なんだろう?」が肝というか、登場人物があからさまに謎めいた行動をとるところが好きです。例えば探偵もののミステリなんかだと、わりと謎解きの部分を読み流してしまうことがあるのですが(自分で謎を解きたいという欲求よりも、探偵の活躍を見たいという欲求の方が上なので)、このお話では作中にしっかり引っかかるところを用意して、普通に読んでいても自然と真相を考えさせてくれるところがよかったです。親切設計というか、ちゃんとミステリさせてくれる作品でした。