第15話 魔力
第15話 魔力
ぐぬぬぬ……。つい吹き出しちゃったみたいな反応普通に傷つくんだが。
「いや、すまん、クリスやアンナに囲まれても平然としてたからそれなりに女慣れしてるのかと……」
「そんなことはどうでもいいんで今からどうするんですこんな状態で早く説明してください今すぐ」
「ぶふっ……今からやるのは、魔法を使えないほど魔力経路の細い子供を魔法が使えるようにするために行う訓練だ。教師役がつないで手の片方から魔力を流し込み、反対の手から押し流されてくる魔力を受け取ることで、だんだんと魔力経路を広げていく」
ところてん方式か。
「他人の魔力、というものは異物だから、これによって魔力が流れること、魔力の動きを感じやすくなる利点がある。普段魔法を使っていない人間はほとんど自分の器ギリギリまで魔力が溜まっているから入ってきた分だけ勝手に出ていこうとする。お互いに魔力消費をほとんどなく簡単に訓練できるところもいいところだな。ああ、異物とは言ったが、体に影響はない」
「これ、向かい合ってやっちゃダメなんですか?」
俺起き抜けだし昨日体拭いてないしアンナさん俺とほとんど同じ構成物質でできてるか不安になるほど柔らかいし色々マジで無理なんだが。
「ダメだな。同じ手同士で手をつないで、できるだけ密着状態で行うのが好ましい。その姿勢が気に入らないなら、交代してもいいぞ?」
「いやもっと無理です! それよりアンナさんがこんなことしなくてもあのでっかいオリアナ先生がやってくれたらいいじゃないですか」
パニくってちょっとわけわかんないこと言ってるな俺。だがオリアナ先生は全く取り合ってくれなかった。
「言ったろう? これはアンナにとっての訓練でもあるんだ。それにわたしも暇だ、とは言ったが四六時中ここにいるわけにもいかなくてね。それとも、アンナに触れるのは嫌かい?」
クソ、なんて嫌な言い方するんだ、嫌なわけないだろ……。でもそれ伝わったら正直キモがられるだろ!
「マモルさん、私なら平気ですから……。それとも、やっぱりお嫌ですか? 昨日もすごく嫌がってましたよね……」
「あーいや、あれは単に恥ずかしかったというか……嫌じゃないですよ」
ああヤバい顔熱い。こっち見ようとしないで顔近い。ていうか俺のセリフ女子か!
「なら問題はないな、じゃあアンナ、やってごらん」
「……はい。マモルさん、ゆっくり呼吸しながら、体の中を流れる力を感じてくださいね」
言いながら、両手をおなかの前に引き寄せ、深呼吸する。もたれかかってくる彼女を完全に抱きかかえてるような状態だ。
「行きます……!」
右手から何かが流れ込んでくる。違和感が腕の中を這いながら昇っていく。
「ぐ、あ……!? なんだこれ……!」
これがアンナさんの魔力、なのか?
「最初は少し気持ち悪いかもしれないが、アンナの魔力が胸に到達するころにはそれもなくなるはずだ。だが、今の力が流れていく感覚は見失うなよ」
こんな感覚見失うわけない。痛みもないのに存在が俺の中身を押し広げようとしているのがわかる。知らずに呼吸が早くなる。
「アンナ、もう少し強めていい。最初は溢れさせないと『出す』感覚がわからないからな」
「はい」
アンナさんの返事と同時、突然腕の中のアンナさんの存在感が増した気がした。一瞬焼けるような感覚が右肩を刺す。と、突然違和感が弱まって、代わりに胸の奥にそれが溜まり始める。鼓動が強まり、もともと胸の中にあった「俺自身」が全身に広がっていく。
「あ……、ああ……!」
自分の中に広がった俺自身が、また胸に戻ろうとしたとき、アンナさんが導くように俺の左手を握りしめる。それに応えるように、無意識に左手を握り返していた。
「あ……手、が……動く……?」
オリアナ先生がぱっと嬉しそうな雰囲気になった。
「うん、うまくいっているな。今、キミの体は自己強化状態にある。全身の機能が向上し、感覚も鋭くなっているはずだ。自分の中に流れ込んできているモノがアンナだということを意識してみたまえ」
「このっ、胸の、これが、アンナさん、なんですか?」
そう口にした瞬間、違和感でしかなかったそれが温かいものに変わった。同時に、体を駆け巡っている力が、つないだ左手からアンナさんに流れ出ていくのを感じる。
「あっ……! 入ってきました、マモルさんが」
ピクリと体を震わせるアンナさんの声を聴きながら、とにかくよくわからない何かがアンナさんと混ざり合っていくのを感じる。あれほどあった違和感が、一つになった大きな力として右手から全身を通って、左手から抜けていく。
「同調したな」
「はい、マモルさんを感じます……」
「どう、ちょう……?」
確かに、今俺は俺とつながっているアンナさんの全身も俺であるかのように感じている。
「そう。今、少年とアンナの中で混ざり合って循環しているそれが、魔力だ」
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