第14話 訓練内容
第14話 訓練内容
「協力者……、今オリアナ先生が言った条件に当てはまってる人、逃げてっちゃったんですが」
いやまぁあれだけ自分の心の裡読み取られちゃったらそりゃ逃げたくもなるだろうけど。弟子に対して容赦がなさすぎるのでは。
「ふむ。まぁわたしは別にアンナを辱めるつもりでいたわけじゃないからな。心配しなくてもアンナには伝わっているよ」
心の声に反応するなっちゅーに。
「とにかく、心配しなくてもそろそろ戻ってくるよ。あの子も自分の仕事を放棄するほど無責任じゃない」
「仕事、ですか……」
「なんだ? 純粋な好意で接してほしい、とか甘えたことを言うんじゃないだろうね、少年」
「そうしてもらえるならもちろん嬉しいですけどね。でも、なんでアンナさんだったんです? 王宮で仕事をするようなメイドさんが貴族なのは仕方ないけど、俺みたいなわけわかんないのにたった一人で側仕えさせるの、彼女にとってデメリットしかないでしょう?」
オリアナ先生は腕を組んで、少し考えるそぶりを見せた。
「あれはわたしの差し金だよ。あの子を少し家から引き離したかったんだ。今、あの子の家はかなり複雑な立場に置かれていてね。まぁだがそこはキミには関係がない。可愛い女の子にお世話してもらってキミもうれしかったろう?」
その顔で下世話な表情をするのをやめろ。いろいろ夢が壊れる。
「まぁ、この話はこれでおしまいだ。そろそろ戻ってくるぞ」
というと同時、部屋の入口にアンナさんの姿が見えた。
「ほらな? ……あの子には話すなよ」
小声で、こちらに念押ししてくるが、本人から聞きもしてないのに家のことなんてこっちから振れるわけないだろ。
「あの……申し訳ありません、取り乱してしまいました」
アンナさんがペコリと頭を下げる。
「いや、別にアンナさんのせいじゃないですよ、何もかもそこのちびっこが悪いです」
「お? なかなかいい度胸をしているじゃないか少年、やるかね?」
シュッシュ、とシャドーし始めるちびっこ可愛い。しかしかなりきちんとしたフォームだ。強化魔法なんてのがあるんだから、多分あんなでも殴られたらやばいんだろうな。
「やりませんよ、ハンデが大きすぎます」
こちらに飛んでくるジャブを手のひらで受け止めながら、一応そう答えておく。よかった強化とかされてない。
「わかっているのに受けるとは、なかなか豪胆だね」
「一応弟子扱いしてくれるんでしょ? こういう場面で人をぶちのめすような師匠はちょっと欲しくないので……」
そういうのはうちのジジイだけで十分だよ。奴は乱取りしてるとだんだん口元がニヤついてくるドSのバトルジャンキーだからな……。
「期間はわからんし、わたしが教わることも多そうだがな」
「じゃあ、お礼代わりに先に支払っておきますよ。温度変化の魔法、水以外にも作用するはずです」
考え方は全く同じだからな、たぶん行ける、おそらく、きっと……。
「ほう? それはいいことを聞いた。いろいろ応用が利きそうだなそれは。……まぁそれは後で試してみるとして、アンナ」
「はっ、はい?」
突然話を振られて、アンナさんは跳ねるように反応した。
「キミには少年の魔力経路を広げる訓練をしてもらう。キミがわたしのところに来始めたころ、キミにもやってやった。覚えているかね」
「ええ、覚えていますけど……」
「よろしい。ただし──」
ちら、とこっちに目をやりながらオリアナ先生はつづけた。
「少年の魔力経路は左腕以外、我々の常識からすれば信じられないほど細く、繊細なはずだ。だから、右手側から通る量をベースにじっくりやるように。魔力の量は問題ないはずだし、末端以外の経路はそれなりに通っているはずだが、時間はそれなりにかかるはずだ」
「あの、それって空いている時間ずっと、っていうことですか?」
なんかアンナさんもじもじしてるな。
「そう考えてもらっていい。キミにとっても魔力を繊細に操る訓練になるはずだよ」
それに対してちびっこの方は完全にどや顔である。
「いえ、それはいいんですけど……。あの、でも、ちょっと恥ずかしいです……」
え、なんか恥ずかしいことするんですか? ていうか被験者に対する説明義務を要求したい!
「キミは少年の姉弟子になるんだ、弟弟子を導いてやるぐらいはしてやらないとな」
そういって、ニィ、とオリアナ先生は笑ってみせた。いったい何が始まるんだ……。
「では早速始めよう。アンナ」
声とともに、アンナさんがこちらへ進み出てくる。
「はい……。あの、マモルさん、ベッドに深めに腰かけていただけますか?」
「? はぁ……」
とりあえず言われたとおりに腰掛ける。これからどうするんだ?
「では、失礼しますっ」
アンナさんは恥ずかしそうにそういうと、俺の足の間に腰掛けて、もたれかかってくる。は? え、なにこれどういう状態? いやそんなことよりアンナさんいい匂いするしなんかいろいろヤバいんだけど?!
「じゃあ、両腕を前に回していただけますか?」
ほとんど抱きしめてるような姿勢じゃないか、いやヤバいでしょこれ見た目。誰かに見られたら俺メイドを手籠めにしようとする悪い異世界人なんじゃないか?
パニックに陥りそうになりつつも腕を差し出すと、アンナさんは俺の両手に自分の両手を絡めてきた。これはっ! あれですよ! 恋人繋ぎ!
「じゃあ、リラックスしてくださ」
「無理です」
「プフッ」
「そこのちびっ子! 笑うなぁ!」
大学生が童貞で悪いかよ! 泣くぞ!
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