96話 ギルドカードの役割
冒険者ギルド 奥の部屋
カウンターには二人のギルド職員がいたが、私達はその横の部屋へと案内されていた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ」
先程の惨劇が嘘のように、落ち着いた様子でカミラはテーブル越しに挨拶をしてきた。
「…魔大陸の方が似合ってるぜ?」
「…冗談じゃないわ、あそこが嫌でやっと手に入れた後方任務なの」
シャロンの軽口に、彼女は面倒くさそうに答えた。
「貴方は、シャロンの仲間?」
「ええ、アリスです」
「…そう」
そう言って、カミラは私を観察でもするように眺める。
そして、少し考えた後に口を開いた。
「…こんな危なそうな子、どこで拾ってきたの?」
「面白そうだろ?」
「…まったく」
カミラはため息をつくと、表情を切り替えた。
「私が危なそうに見えますか?」
可愛いですよー?
無害ですよー?
そんなアピールをすると、カミラは心底、嫌そうな顔を浮かべた。
「…あそこは、勘が鈍いやつは死ぬの」
そう言って、彼女は苦笑する。
「まあ、良いわ。何から聞きたい?」
「魔大陸にすぐ行きたいんだけどよ」
「無理ね、先着順なの。ギルドカードを貸して」
「ほらよ」
シャロンは懐から銀のギルドカードを机に置くと、カミラはそれを手に取る。
そして、机の上に置かれた箱のような装置へと差し込むと、少し間を置いて取り出した。
「銀級なのはさすが…ただランク1だわ」
そう言って、カードをシャロンに返す。
「貴方は?」
カミラに促された私は、銅のギルドカードを差し出す。
「…銅級なのね。ランクは同じく1」
そして、同じように装置に差し込むと、カードを返してきた。
「銀級、銅級ってなんですか?」
「カードの色よ。王国からの信用度を表しているの」
彼女の説明を要約すれば、通常は銅級が一般的なようだ。
銀級とはシャロンのような貴族やそれと同レベルの信頼度の人物に発行されるらしい。
そして、王族等より高い身分や貢献度の人物には、金級が発行されるが、まずお目にかかる事はないそうだ。
…まあ、王族が冒険者とか酔狂もいい所でしょうしね。
「なあ、ランクって軍属の時のやつだよな?なんで、俺が1なんだ?」
「…貴方、まともな手続きで、ここに来てないでしょ?」
「……」
シャロンは気不味そうに目を逸らす。
「あの?私にはランクの意味が分からないのですが?」
「魔素の濃い場所に潜ったり、魔物を倒すと、カードが魔素を吸収するらしいわ」
「…へぇ」
魔大陸の人間にとっては常識的な話なのだろうが、私にはとても興味深い内容だ。
「カードに溜まった魔素の量を測定して刻むのが、この装置の役割」
「神殿はねぇのか?」
「あれは魔大陸だけの文字通り神の遺物だわ」
…神殿?
…神の遺物?
「なんですか、それ」
「…このギルドの情報開示レベルではないわね」
つまり魔大陸に行けば、教えてもらえるのだろうか?
私はシャロンの方を見る。
「あとで、こっそりな」
「…ギルド職員の前で言わないでくれる?」
カミラは呆れたように呟いた。
「それで、私達はどうしたらいいのです?」
「ランク20が魔大陸に渡る条件よ」
「どこでランクを上げるんだよ?」
シャロンの言葉に、カミラは肩をすくめる。
「あら?あるじゃない魔大陸に続く大穴が」
「…あぁ」
——安心しろ。今は魔導列車っていう便利な乗り物があるからな
確かにあの男は魔大陸まで、洞窟内を歩くとは言わなかった。
だが、
…暗い、汚い、虫がいる。
結局、行く事になるのかよと私は顔を引き攣らせるのだった。
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