133話 外伝 カレンの憂鬱

都市国家キヌス


「バカな!?全滅だと!?」


王城の一室に、第七王子の声が響き渡る。

信じれないと言う第七王子の横で、カレンはなんとか眉をひそめるだけに、とどめた。


内心は、有り得ないである。


「カレン!どうなって…」


罵声を浴びせようとした、第七王子の声が止まる。


カレンが一言も発せず、こちらも見ず、顎に手を当てているのだ。


付き合いの長い第七王子は、バカなりに学習している。

この状態の真剣に考え込む彼女に、声をかけてはいけない。


「わ、吾輩は邪魔にならないように、部屋に戻るぞ」


そして、第七王子は逃げるように部屋から、立ち去った。


……

………


「記録水晶を、映し出せますか?」


側に控える魔導師に、カレンは声をかける。


そして、既に用意されてあった魔道具に、第二騎士団の最後が映し出された。


腕を振るう少女。

同時に斬り飛ばされる騎士達。


こちらの魔法は、ありえない規模の土魔法で防がれる。


そして、鳥の視点からはハッキリと映された、瞬間移動。


混乱する騎士団の中央で、また腕を振る少女。

その瞳は、赤く変色している。


「…魔族ですか」


長いゼロム同盟の歴史書でも、わずかな記述が残るのみの種族である。


だが、その記述からは、エルフと変わらない程度の力しか伺えない。


「あの王女殿下は、魔族の王の墓でも、掘り当ててきたのでしょうかね?」


側に控える魔導師は、


「それはわかりませんが、一つ気になる点がございます」


そう言って、少女の首筋と右手の紋様を指す。


「これは、武装魔法陣という古い魔法なのですが、色が赤いのです」

「武装魔法陣?」


私が見た事があるのは、青色だったと言う魔導師。

聞いた事がない言葉だと、カレンは呟いた。


「大昔の魔法になります。また欠陥魔法としか認識されていない為、酔狂な者しか研究していません」


そして、第七王子の給金で集めた魔導師の中に、その酔狂な者がいると伝えるのだった。


「すぐに呼んでもらいましょうか」


特に期待する情報が得られるとも思えないが、情報の見落としこそ、敗因と考えるカレンは指示を出した。


現に何かを見落としたから、第二騎士団は全滅したのだ。


精鋭は、都市国家キヌスに置いてあるとは言え、騎兵500の価値は軽くはない。


特に、魔術師50は痛かった。


「それが、一瞬のうちに殺されるなんて…」


精鋭の騎士団をかき集めても、あの魔族に全滅させられる未来しか、見えずにいた。

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