122話 王女殿下と獣人
「名無しさんは、やっぱりバカなんですよね?」
傭兵ギルドに戻り、部屋で熟睡していたルルに、事の顛末を伝える。
ルルを忘れて、決めてしまったのだ。
ジト目で呆れたようにため息をつかれ、忘れていたと素直に謝れば、やっぱりバカなんですよね?と罵倒される。
王女殿下は、そのやり取りを、不思議そうな顔で眺めていた。
そして、机の上に傭兵ギルドの地図を広げると、
「依頼内容の目的地まで、街道を通って行くのです?」
ルルは、中央に位置する傭兵の街から、都市国家ラクバールの国境線沿いを南東に進み、東の端まで指でなぞって確認する。
あまり南よりに進路を取ると、都市国家群の紛争地帯に巻き込まれてしまう為だ。
王女殿下は、うなづいた。
「ルルは、森を通れば良いと提案します」
今度は傭兵の街から森へ南下し、直角に東へ進むルートを指でなぞる。
そして、王女殿下に視線を向ける。
「あの森で、方位磁針は意味がないと聞いたが?」
「ルルには、問題ありません」
獣人の方向感覚は他種族とは、異次元なのだ。
その言葉に、私はうなづいた。
「街道と比べて、日数はどうなのだ?」
「たぶん、3倍程はかかるとルルは考えます」
その言葉に王女殿下は、
「ラクバールの使者が、どのような根回しをするかわからない。3倍の日数ともなれば、平穏に王都に入れるとも限らない故、街道を進みたいと思う」
「…わかりました」
反対されると考えていたのか、ルルの言葉に王女殿下は目を丸くする。
「名無しさんはバカだけど、バケモノなのです」
ルルの事を忘れるくらいにはと、ジト目を飛ばしてきた。
「依頼自体には、反対しないのですね?」
「ルルはあの時、名無しさんについて行くと決めましたから。だけど、相談されなかった事に、ルルは怒っているのです」
そう言うと、ルルは外へと向かおうとした。
「どこへ行くのです?」
「街道を徒歩で、長旅するつもりなんですか?馬車を探してくるに決まってます」
やっぱりバカなんですね?と言葉を残し、ルルは立ち去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます