118話 転職の誘い 中編
「そなたは、雇えるのか?」
マキナの言葉に静まり返った静寂の後、思いついたように王女殿下は期待を投げかけた。
投げかけられたのは、私である。
「…私を護衛にですか?」
「先程のそなたの剣捌き、かなりの使い手であろう?」
消えたかのような動きであったぞと言う殿下に、マキナがそうなのか?と興味を示す。
「私は、受付という定職がありますし…」
王女殿下の護衛という刺激に興味が湧きながらも、マキナに確認の視線を送る。
「自分で決める事だ。ただ、職は辞してもらおう。死別になりそうだがな」
許可は下りたが、傭兵への転職になるらしい。
そして、騎士団相手に護衛が一人。
死別とは普通の感覚なら、当然の判断だろう。
「報酬は、望むままにじゃな?」
壁に背を預けていたクロードが、私の横に座り、王女殿下に確認する。
「私のできる範囲で、叶えよう」
「この依頼、受けるのじゃ」
殿下の言葉を聞き、クロードが促す。
「私は、定職を失うんですけどねぇ」
「ほぅ、その言い方だと、騎士団はまるで障害にもならないようだな?」
「まぁ、そうですね」
疑問を浮かべるマキナに先程、城壁に叩きつけたばかりである事を伝える。
それを聞いたマキナは、信じられないから少し待っていろと言い、
…
……
………
傭兵の街の一角にある闘技場
本来は、傭兵がカカシに剣を打ち込む鍛錬場として、使われていたのだが…
今、私は百人を超える傭兵達に、囲まれていた。
信じられないから待っていろと、マキナが用意した傭兵達である。
…なぜ、こんな事になっているのでしょうか?
だが、マキナが領主の変人エルフを引っ張り出し、領域を一部解除させたら、お祭りの始まりだ。
木の棒を片手に、見知った顔の傭兵達が、私に襲いかかる。
初めは私に怪我をさせないように、バツの悪そうな顔をした傭兵が、手加減をしての一撃であった。
それをかわして、胴に木の棒を叩き込み、吹き飛ばす。
よくわからないまま巻き込まれた鬱憤を晴らすように、全力で叩き込んだ。
「本気で来いよ」
手招きした一言と、なぎ払った一撃に、目が覚めた傭兵達は本気で襲いかかる。
それをかわしては、ストレス発散になぎ払う。
それを何度も繰り返した頃に、動く者は誰もいなくなっていた。
「だから、僕はやめた方が良いって、言ったじゃない」
「…あなたと同じ人外ですか」
変人エルフとマキナの声が響く。
クロードは、当然だなという顔をしていた。
そして、王女殿下はなぜか目を輝かせて、こちらを見ていた。
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