第76話 一流のやり方

南の森を抜け、三流の仕事をした俺達は街道を歩いていた。


この道を進めば、村か町に着くはずだが…。

2つに分かれた道を見て、サーチ魔法を飛ばす。


少し離れた先に、先程の村とは違う小さな集団の反応があった。

ちなみに、このサーチ魔法は反応距離も限られている。

あまり遠くなると、小さすぎてわからなくなるのだ。


「この先に集団がいる」

「…方角もわからないのに、そんな事はわかるのですね?」


俺が何をしたか、わからないルルは呟く。


しばらく進むと、馬車を囲むガラの悪そうな男達がいた。

目を凝らすと争った形跡と、人が転がっている。


「なんだぁ?」


無人の荒野のように構わず近づく俺達に、ガラの悪い男が声をかけてきた。


「…盗賊かな」

「ああ?見てわからないのか?俺達は盗賊だが?」

「いや、俺達も盗賊だ」


帯刀してても、子供にしか見えないのだろう。

警戒心もない男は、面白そうに笑い声を上げた。


「…斬っていいか?」


先程の反省から、ルルに一流の意見を求める。


「…そうですねぇ」


ルルは男達を観察する。


「この人は見かけはこんなですけど、バケモノです。試したい人は剣を抜いてください」


深くローブを被ったルルは、そう告げると、


「この男達から、何か奪いたいものはありますか?」


俺に問いかけてきたので、


「…情報かな。この辺りの事が知りたい」


そう答えた。


馬車の荷物を漁る男達は、不思議な子供を見ているような視線で、


「おもしれぇイカれたガキだな」


一人の男が剣を抜く。


「あの男だけ本気で、斬っていいですよ」


ルルの許可が出たので、俺は剣を抜いた男の懐に飛び込む。

男は何も理解できず、崩れ落ちた。


血の滴る剣を、鞘に収める。


面白い見世物を見ていたはずの男達は、手を止め、唖然としていた。


「…まだ試したい人はいますか?」


静まり返った場に、ルルの声が響く。

男達はクビを横に振った。


「欲しいのは情報だな?こいつじゃないんだな?」


一人の男が、馬車の荷物を指差して確認する。


「はい。欲しいのは情報です」


ルルが、にこやかに答えた。

男達が安堵するのを、感じる。


「これが、一流のやり方か?」

「そうですよ。私達は、強い者に逆らいません。奪わない者と、無駄な血を流しません」


誰だって命は惜しいですからねと、彼女は付け加える。


バケモノを見るように、こちらを観察する男達を見てなるほどと、思うのであった。

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