第71-1話 幕間 ルル

ルルは盗賊団の中で、育ちました。


自分が獣人で、人間とは違うと知ったのは、15歳の時です。


赤髪と青髪のモヒカンと喧嘩になって、半殺しにしてしまいました。


「おめーなんて、ここが無くなったら、他に行くとこなんてねーんだぞ!」

「獣人が人の中で、生きれると思うなよ!」


今思うと、負けた悔しさからの精一杯の強がりだったと思います。


でも、ルルは力を使う事をやめました。


20歳になった時に、ルルの盗賊団はどこかの騎士団に討伐され、半壊になりました。


ルルを大切に育ててくれた親分も、死にました。


そして、生き残りが逃げた先で、新しい親分が決まりました。

新しい親分はやる気がなかったけど、飛び抜けて強かったのです。


ルルは、盗賊の生き方しか知りません。

ルルは、ここでの生き方しか知りません。


いつのまにか、ルルは卑屈になっていました。


みんなの嫌がる仕事を、率先してしました。

みんなからの親切に、頼らないようにしてきました。


そんな時、神さまを拾いました。

今思うと、悪魔なのかもしれません。


でも、ルルはその時は良い案だと思ったのです。

この神さまを上手く使えば、集落の食料は困らなくなるって…。


ルルの予想通り、バカみたいに強い神さまは、集落の食料事情を劇的に改善しました。


そして、ルルの予想外な事が起こったのです。


集落の中に、親分についていく盗賊らしい生き方を望む者と、神さまについていく農民らしい生き方を望む者に分かれたのです。


赤髪のモヒカンは言いました。

「このままじゃ、親分は死んじまう」


新しい親分は、誰にも強制しません。

親分は一人でも、盗賊らしく生きようとします。

だから、親分の狩りについていく人が減れば、返り討ちに合う事も…。


騎士団に半壊させられた光景を、思い出します。


青髪のモヒカンは言いました。

「ルル、あいつを殺すか追い出してくれよ。このままじゃ、俺達はバラバラになっちまう」


あの時は良い案だと思ったのです。


ルルが好きな、大盗賊の物語のセリフです。

ルルもあの物語のように、間違えたのでしょうか?


ルルは、居場所を失いたくありません。

どうすれば、良いのでしょうか?


ルルは、盗賊の生き方しか知りません。

ルルは、ここでの生き方しか知りません。

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