第71話 盗賊団の帰還
あれから、また一ヶ月近く経った。
一時的に人数が半減した集落は、肉の必要性が薄れていた。
狩りも、数日おきにしかしていない。
だから、俺は、
「この種を蒔けば、どれくらいで育つんだろうな?」
森で食べれる木の実を拾い、集落の土を耕して、蒔いてみる。
「…わかりません」
ルルは何か思い悩んだ表情で、答える。
親分達が狩りに出てから、この調子だ。
集落の女が、小川に魚の生簀を作った時も、微妙そうな顔をしていた。
食料事情に余裕が出来た集落の人々は、生活の改善をする余裕が出てきたのにだ。
最近では、ルルに相談するよりも、村人出身の盗賊や女に相談される事の方が多い。
この木の実を植える案も、村人出身の盗賊からだった。
魔物が徘徊する森で、狩りと両立させるのが、今までは困難だったらしい。
食べられる木の実を狙うのは、人間だけじゃないからな。
人が集まり、狩りをして、やがて村や町になっていくのか。
ここもあと何十年かしたら、山奥の町として栄えるのだろうか?
…
……
………
数日後
親分達が、大量の収穫物を積んで帰ってきた。
焼肉係が、嬉しそうに肉を焼く。
「ほら、男物の服とローブだ」
子供物だがなと、余計な一言をつけて、放り投げてきた。
「交換は肉と、木の実を絞ったジュースがあるよ」
「そいつは楽しみだ」
「山菜も植えているからな」
「食べる楽しみが増えるな。休んだら食事を貰おう」
そう言うと、自分の家へと入って行った。
「なんだおまえら!?農民の真似事か?」
畑の方で、赤髪のモヒカンが叫んでいる。
「バカ!森に生えてる芋で、こいつは美味いんだぞ?」
「あー、あれは美味いな」
反論する盗賊と、同意する青髪のモヒカン。
いなきゃいないで静かだが、いればいるで騒がしいやつらだな。
服を受け取った俺は、面倒ごとはごめんとばかりにルルの家へと戻る。
食事まで時間がありそうだし、寝るか。
親分と交換した、藁の布団に潜り込んだ。
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