第42話 魔の森 改稿
魔の森
アルマ王国の東に位置する広大な樹海であり、強力な魔物が生息している場所である。
濃霧のような魔素に覆われたその森は、人の侵入を阻む別世界となっている。
一説には王国を作った冒険者達は、この魔の森を東から抜けてきたらしい。
たが、それを確認した者はいない。
奥地に足を進める者は、例外なく帰らぬ者となるからだ。
「…へぇ」
そんな話を聞きながら、馬車に揺られている。
目指すは魔の森…ではなく、王国より北、ノース侯爵領、城塞都市ガレオンだ。
騎士団に護衛されながらの旅路は順調に進み、既に三つの都市に泊まった後だ。
もうそろそろノース侯爵の領地に入るらしい。
「光の勇者と呼ばれた初代国王様は、才能合計値が50だったそうよ」
「魔物に支配された土地を解放して、最後に建国する面白い物語ですよね」
マリオンのいない間、部屋に閉じ籠り、本の虫となっていたのだ。
さすが子爵様のお屋敷、さすが侯爵令嬢。
庶民ではなかなか手の届かない冒険譚が、当たり前のように並んでいたのだ。
「竜殺しの騎士は読んだ?」
「深い谷の底に住み着いた、地竜を倒す騎士の物語ですね」
「地竜の名前は?」
「確か…ガレオン?」
うん?城塞都市ガレオン?
「そうよ。地竜ガレオンの伝説が残る、深い谷に築いた関所」
五等爵の説明をする時に、彼女は言っていた。
国境隣接地帯を治める侯爵は、武闘派。
中でも、ノース侯爵家は戦闘狂の誉れを得ていると。
「今は北の蛮族を抑える要害、城塞都市ガレオンよ」
侯爵令嬢なのに、最前線配置なのか。
楽しそうに胸を張るマリオンを見て、頭がおかしい子だったのを思い出すのであった。
苦笑いを浮かべながら、窓の外に目をやると景色に変化が現れていた。
「そろそろ、ノース侯爵領かしら?」
広大な草原と森から、茶褐色の山間地へと変わっていく。
…肥沃な大地は、王国直轄領なのか。
そして、道幅も狭くなり整備されていない山道になる頃だ。
遠くの方に煙が上がっている。
「マリオン様、斥候からこの先で、盗賊らしき集団に商人の馬車が襲われていると報告がありました」
「…数は?」
「およそ20、付近に障害物はない為、伏兵の心配はなさそうです」
馬車に並走してきた騎士が、小窓から告げる。
「……」
マリオンは顎に手を当て、少し考えると、
「突撃縦列陣形、目標視認後に一斉遠距離魔法、あとの指示は任すわ。貴族の義務を果たすわよ」
「御意」
「アリスちゃんはここで、見学しててね」
そう言うと馬車の扉を開き、御者の席へと飛び乗ったのだ。
その凛々しい姿は、まるで冒険譚の主人公のようだった。
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