第39-1話 幕間 女騎士
小さい頃から、男の子達と外で遊ぶのが好きだった。
男爵家の三女とはいえ、小さな町だ。
我が男爵家が貧しい事もあり、身分差を感じる事はなかった。
13歳になり、男女の身体的特徴差が出る頃には、脳筋女と軽口を叩かれていた。
軽口を叩くやつには、木刀を叩きつけてやった。
年頃の活発な男子が憧れるように、私も騎士に憧れるようになっていた。
そして、15歳になったある日、私に剣士の才能がある事が判明する。
攻撃 6
防御 6
知力 2
魔力 1
速さ 5
幸運な事に我が家には、騎士の素質があった。
成人を迎えた貧乏男爵家の三女にとって、これ以上の道はなかった。
まして、私のようなガサツな女など。
士官学校では、礼儀と忠節を教え込まれた。
どうやら、礼儀に関しては、私には向かないものらしい。
私は、ガサツな自分を殺す事に努めた。
隊長曰く、私は黙っていれば有能そうに見えるらしい。
隊長から、主君の大切なお人形に夕食を届けるように言われる。
アリスと呼ばれる彼女を見る。
絶世の美少女、なるほど、マリオン様が気にいるわけだ。
彼女は、貧乏貴族では味わう事もないだろう料理の説明を、慣れたようにこなしていた。
本当に奴隷なのだろうか?
彼女の首筋を見ながら、思う。
そして、部屋から出ようとした時、声をかけられた。
彼女の唐突な質問に、私は困った。
困った時は、士官学校の騎士の心得を思い出す。
私は騎士として、答えた。
…
……
………
二度目の彼女との会話は、マリオン様の君命を受けた時であった。
彼女は、不機嫌そうであった。
不機嫌そうなだけなら、良かったが、私に言葉を投げかける。
黙っていれば有能そうに見えるらしい私は、騎士らしく答えた。
ボロが出るから、やめて欲しい。
主君からの評価を、下げるわけにはいかないのだ。
そして、なぜか互いに木刀を持ち、模擬戦をしている。
お人形さんの気まぐれに付き合わされるのも、騎士の仕事なのか、という考えはすぐに消し飛んだ。
なんだ、このチグハグなバケモノは…
レベル差を感じる身体能力の差を、技術でカバーしている。
信じられないが、剣術レベルは彼女の方が上なのだろう。
マリオン様はお人形を可愛がるふりをして、このバケモノを飼い慣らそうとしているのか。
さすが、戦闘狂と誉れ高いノース侯爵家。
そんな事が、頭によぎる。
そして、彼女は力尽きるまで、私の急所を狙ってきた。
私が勝てたのは、本当にただのレベル差にすぎない。
彼女が少しレベルを上げれば、私など歯牙にもかけないであろう。
それなのに、清々しい顔で参りましたと倒れ込む彼女に、誇り高い剣士の顔を感じた。
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