第29-1話 幕間 エリー

美少女の皮を被った何か。

彼女を買って、1年観察した感想。


マリオンに手を引かれる彼女を見送る。


平穏な王宮に推挙して、あの才能を埋もれさすより、面白い選択をしたと思う。

一見従順な彼女の奥には、忠誠心というものが見えない。

あれを飼っていれば、いつか手を噛まれるだろう。


マリオン・フロレンス。

ノース侯爵家の長女。


彼女のノース侯爵領は王国北方に位置して、たびたび国境隣接地帯で小競り合いが起こっている。


戦争狂として名高いノース侯爵家に買われた、きっと面白い事になる。


彼女の魔法を思い出す。


一度目は、店を破壊した爆裂魔法。

おとぎ話の光の勇者にも登場する、古の魔法。

魔術師が口伝で伝え、戦場でしか見ないのに。

彼女の不気味さが増した。


二度目は爆裂魔法の応用と、遠距離の大木を簡単に切断する不可視の何か。


原理のわからない、初見殺しの一撃必殺。

彼女が、私にはコントロールできないものだと理解した。


彼女と戦場で相対したら、きっと腕一振りで私の首は胴体とお別れ…


けれど、一度見た。


彼女と戦場で、敵として出会ったら…

楽しみが増えた。


そういえば、大事な事を思い出した。

彼女は男の子。


マリオンには、伝えたかしら?

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