第29-2話 幕間 マリオン・フロレンス

私の横で、お人形さんのように整った顔の少女が、窓の外を見つめている。

王都に向かう馬車の中、二人きりの空間。


やっと手に入ったおもちゃで、遊びたい衝動を抑える。


彼女を見つけたのは、半年以上前…

12歳から通った、王都の貴族学校を卒業した帰り道。


お父様から賜った領地、いえ…ノース侯爵の試練と呼ばれている土地への帰り道だったわ。


城塞都市ガレオン


それが、ノース侯爵の試練と呼ばれている私の領地。

お父様もお爺様も、ノース侯爵の次期領主は成人してから、ここを5年治める事が決まりとなっている。


なので、何か使えるものがないか、交易都市に寄り道をしたら、思いがけない出会いがあったの。


彼女の首筋を見る。

奴隷紋が、刻まれている。


領地の特性上、奴隷は市場で見慣れていた。

瞳の奥にみんな、恐怖を宿しているの。

…つまらない。


でも、彼女は違ったわ。

美しい外見に劣らない、気高さがあるのよ。


領地に戻ってからも、交易都市で物資を仕入れる名目で、彼女の元に通う。

可愛いお人形さんを壊したい気持ちから、屈服させたい気持ちに変わっていた。


窓の外を眺める彼女。


…人を支配するには、その者の欲を満たせ。

貴族学校で習った領地経営学を、思い出す。


奴隷の彼女に、最高級の部屋と睡眠を与えてみましょう…

奴隷の彼女に、最高級の食事を与えてみましょう…


彼女のどの欲を満たせば、私の足元に跪くのかしら?


でも、まだ焦っちゃダメ。

彼女は賢い。


私は、おもちゃで遊びたい衝動を抑える。

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