第18-1話 幕間 エリー

頭の良い子。

少しの会話の第一印象。


魔力の才能を、測ってみる。

手を握り、魔力を軽く流す。


伝導率の高さに、久しぶりに驚いた。

この子、私と同レベルの魔力才能10に近い気がする。

天才と呼ばれるレベル。

王国始まって以来の天才、最年少魔導師と呼ばれた私と…


そして、次に驚いたのは、魔力の流れた黒い瞳が緋色に変わっていた事。

あれは魔眼…。

知る限り、人族が持たざるもの。


得体の知れない子に、印象が変わった。


でも、こんな掘り出し物はないから、買った。


私は、会話は苦手。

戦場以外に興味がない私は、王宮魔導師として平時にはやる事がなかった。

いえ、やる気がなかったから、仕事が回されなかった。


そんなある日、宮中伯から富国強兵政策と言われ、魔術師の人材発掘の任務が下された。

知力魔力の才能共に10で、限界までレベルを上げた私には、皆が凡庸に見えた。

彼を除いて…


アリスと名付けた彼は、従順だった。

賢すぎるが、私の邪魔にならない空気のような存在。

きっと、狡猾なのだろう。

戦場帰りの勘が囁く。


でも、めんどくさいから考えない。


私は、戦場にしか興味がないから…


アリスを買ってから、半年近くが過ぎた。

彼を何の為に買ったのか、忘れていた。

ただ、便利な子だとは思う。


そんなある日、マリオンから彼の話を聞いた。

彼が私の人生を、面白くしてくれそうな子だと思い出した。


彼に問う。

力が欲しいかと。

答えは、平穏を望むつまらないものだった。


ただ、彼の才能にまた驚いた。

魔力の塊を、一目で認知できたのだ。

魔力のありふれたこの世界で、それを再認識するには才能と訓練が必要なのにだ。

まして魔力の属性、色まで認知できるなど信じられなかった。


そして、彼の最後に見せた笑み。


この子を育てたら、どんな怪物が出来上がるか楽しみになった。

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