第6-1話 幕間 アイリス
ボクの生まれた村は、開拓村と呼ばれていた。
人口が増えた村から、新しい土地を求めて集団で開拓をする新しい村。
成功すれば開拓され尽くした前の村と違い、土地は広大に広がるフロンティア、ボクの父と母もそんな夢を見て、ここにやってきたんだと思う。
3人兄妹だった。
今、ボクは両親に売られて、荷馬車に載せられている。
銀貨10枚が、ボクの値段だ。
本当に3人兄妹だったのかな?
歳の離れた兄を思い出して、今になって頭をよぎる。
城壁を抜け、知らない街の知らない屋敷に連れてこられた。
ここで、売られるまで待つみたい。
不自由な開拓村で、両親の手伝いをしていたから体力には自信があった。
剣の訓練を受けると、歳上の男の子にも負けなかった。
ボクは剣士になろうと決めた。
目標が見つかったら、ボクは泣くのを諦めた。
同じような奴隷の子達に、積極的に話しかける。
どんな状況にも負けない、ここは開拓村なんだと思うようになった。
そんなある日、黒髪の天使のような女の子が連れてこられた。
異国から来たのか、言葉が通じなかった。
凄く可愛かったから、仲良くなりたくて何度も話しかけてみた。
そしたら、そのうちボクの言葉が通じている気がした。
でも、無視された。
それでも諦めずに話しかけていたら、男の子だとわかった。
こんな可愛いのにって、ボクはショックを受けたんだ。
名前はないって言うから、クロくんって名付けてあげた。
また、無視された。
でも、ある時から凄く仲良くなった。
今では普通に会話をしてくれる。
ただ、彼との模擬戦は、どんどん力の差が広がるのを感じた。
ボクはまたショックを受けた。
そして、今は女傭兵さんに買われて、屋敷を背にしている。
最後までボクの名前を呼ばなかった彼は、ボクの名前を、顔を、思い出を、覚えていてくれるのだろうか。
ボクの名前はアイリス。
いつかまた…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます