第23話 不公平な現実
「……今日はお休みだったわね。でも、王都の外に採取に出かける日だったはず」
目を覚ますと、まだ外は暗かった。
かなり早く起きてしまったようだ。
このまま二度寝をするのもいいだろう。
無理に起きると、隣で気持ちよさそうに寝ているララちゃんを起こしてしまうから。
ララちゃんはお店の看板娘としてよくやってくれているし、今日も狩猟と採集につき合ってくれるそうだ。
『無理をしないで、年頃の女の子らしくデートに出かけてもいいのよ』って言ったら、『相手がいませんし、周囲にいる男性って、ミルコさんとアンソンさんですよ』って言われてしまった。
ボンタ君が何気に範囲外になっていて可哀想だったけど、それを指摘するのはもっと可哀想なので、なにも言わないことにする。
彼ももっと大人になれば、頼り甲斐があっていいと思うのよね。
仕事ぶりも真面目で優しいし。
ミルコさんはララちゃんは幼すぎて守備範囲外で、アンソンさんもララちゃんにそういう気持ちは持っていない。
二人とも、どういうわけか私を狙っているらしいけど、私はあまり女性っぽくないし、胸も控えめだからなぁ……。
髪も手入れが面倒だから、大分伸びたけど後ろでポニーテール状に束ねているだけだ。
本当に、馬の尻尾みたいになってきたわね。
まあ、シャンプーとコンディショナーは採取した薬草や魔獣の素材などで自作しているから、髪を洗ってなくて臭かったり、ゴワゴワになってはいなかったけど。
そういえば、前に親分さんも黒髪が綺麗でいいなって言ってくれたし!
やはり、あとは胸があれば……。
というかさぁ……。
私の胸……Bカップって、それは中途半端過ぎでしょう!
むしろAAとかなら、そういう小さな胸が好きな男性が……そういう人はパスね!
胸が大きければと思わずにいられなかった。
親分さんは、胸は大きい方が好きなのかしら?
店だと聞きづらい……。
「あれ? ララちゃんの胸……」
お店がオープンしてから、わずかな期間で大きくなってない?
気のせい……いや、私たちは毎日同じベッドで寝ていて、私は横になったララちゃんの胸の盛り上がり位置をちゃんと確認している。
あきらかに、ララちゃんの胸は以前よりも大きくなっていた。
「理不尽な……」
世界は違えど、神様は不公平である。
もう十八歳でこれ以上胸の成長が期待できない私に対し、まだ十四歳のララちゃんは、むしろこれからが成長期だ。
今でも胸の大きさで負けているというのに、あと数年でさらに差がつくのか……。
不公平すぎるわ!
私だって、親分さんが思わず視線を顔の下に向けてしまうほどの胸が欲しいわよ!
「ララちゃんと最初に出会った時、すでにDカップはあったはず……」
魔猿の襲撃で家族と故郷を失ったララちゃんは、王都までの道を狩猟採集で得た成果のみで生き延びてきた。
つまり、栄養不足気味だったはずだ。
一方私の方は半年間、ちゃんと必要な栄養……特に胸の土台を作るタンパク質……を豊富に取っていたはずなのに……。
ハニービーのハチミツで糖質もちゃんととっていた。
これに加え、ネットで調べた胸が大きくなる体操を毎日確実にこなしていたというのに……。
胸にまったく変化がないってどういうことなのかしら?
筋肉量も増え、召喚直後に比べて魔獣を狩るのが楽になったというのに、私の胸はそのままだ。
こんな理不尽なことがあっていいのだろうか?
いや、まったくよくない!
「実は詰め物とか? なわけないよね……ちょっと参考までに……」
別に私は女好きではないけど、ついララちゃんの寝息により定期的に上下する胸を触りたくなってしまった。
これも、私の胸を大きくするための研究、観察ってわけよ。
決して、ミルコさんのように邪な理由で女の子の胸を触ろうとしているわけではないのだから。
実際に、彼がそんなことをしているのかは不明だけど。
「では……張りがあるのに柔らかい……」
この大きさで、ノーブラなのに寝ても形崩れせず、触るとまるでマシュマロのように柔らかい。
羨ましい気持ちが増幅していったのもあって、ついララちゃんの胸を揉み続けてしまった。
そして、そのせいでララちゃんは目を覚ましてしまう。
「ううん……あの、ユキコさん。ユキコさんはなにを?」
「研究です」
そう、私もララちゃんみたいに大きな胸を手に入れるのだ!
「……あの私……女性には興味ないんですけど、ユキコさんならいいかなって……」
「私は、まったくよくないわよ! というか、誤解だから!」
なぜか、顔を真っ赤にさせたララちゃんから恥ずかしそうにそう言わてしまい、私は慌てて彼女の決意を拒否する羽目になってしまうのであった。
私も胸を大きくして、親分さんにアピールしてみたい。
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