杏姫の力?
赤ずきんちゃんは確かにそう言った。
もえちゃんと、ナツメさんもわたしの顔を見てる。
「あの、あなた……もしかして、人間じゃないの?」
どうしてそう思ったのかわからないけど、赤ずきんちゃんの顔を見てたら、そんな気がしてきた。
「はい。わたしは、シキガミ。名を、メロリといいます」
赤ずきんちゃんは、まだ少しぼうっとした顔で、わたしを見つめてそう言った。
「シキガミ……ヨジロウの、仲間?」
「はい。わたしは、あんずひめのシキガミです。あなたは……あんずひめ、ではない……だけど……」
赤ずきんちゃんこと、メロリは、わたしの制服のポケットをゆびさした。
「そこに、ひめさまの、ちからをかんじます」
「あ! これ、これね……」
きっとスマホのことだ。さっき神社で手に入れたアプリのこと……!
スマホを取り出して見せようと思ったら、お花のアイコンが光ってた。
「わっ……これ……!」
「あんずのはな」
いつの間にかとなりにいて、背伸びをしてわたしのスマホを覗き込んでいたメロリがそう言って、まっ白な指でアプリにそっと触れた。
これ、
そんなことを思っていたら、アプリが
さっきは真っ黒な画面だったけど、今度は四角い
なんか変だな?
と思ったら、お花が消えて、
あ! 横になってるね。変だと思ったら、これ、スマホを横にして見るやつだ。
わたしはあわててスマホを横にする。
もえちゃんとナツメさんが、わたしの様子に気付いて、わたしの後ろに走ってきた。三人一緒に動画を見る。
『人間はすごいな、こんな道具を作れるんか』
ちっちゃな子供みたいな、舌っ足らずな声がした。
画面の映像が川から移動して、砂利だらけの川原の石の上にある、茶色いものをう映した。歴史の教科書で見たことある……
火縄銃に何かが触れた。
人間の手じゃない……カエルみたいな緑色で、手に水かきがついてる。でも大きさは人間の子供の手と同じくらいあるみたいに見えた。
「え? なにこれ……」
わたしが思わずつぶやくと、後ろのふたりから、しいっ! と怒られた……すみません。
『おーい!』
遠くからさっきとはちがう、男の子の声がした。
『きゅうり持ってきたど!』
この辺り
両手に
『わあ。ありがとう!』
お
この動画、まるでこの声の主の目線になってるみたいだ。
男の子がキュウリを石の上に、一本一本ていねいに置いていく。お店で見るようなまっすぐで同じ長さじゃなくて、曲がってて、大きさもまちまちだ。
『うれしいなあ。キュウリ、ありがとう』
『なんもだ! この前、雨っこ降らせでけだお
『水神さまなんて、照れるなあ……ぼくは、ただのカッパなんだけど』
えへへ、と笑う声は何だかまんざらでもなさろう。
「カッパ!」
今度は、もえちゃんが後ろで声を上げた。
すかさずナツメさんに
動画は急に場面が変わった。
さっき自分をカッパといった、この動画の
突然、画面が暗くなった。雨が降ってる。大雨だ。
川がすごい勢いで
カッパの目――スマホの画面に映っているのは、両腕を広げた少年の背中。
そしてその向こうにいる、時代劇でよくみるようなお侍さんみたいな人たち。たった一人の少年に、何人もの大人たちが刀を
『おのれ、アヤカシめ! 子供をたぶらかしおって!』
侍が叫んだ。
『ちがう! コイツはわりごどさねんだ!
少年は、お侍からカッパを守ろうとしているみたいに見えた。
『アヤカシ、貴様、
『はっ……ああ……!』
侍の言葉に、カッパが震えた息を吐いた。
『じゅう? じゅうってなんだ? コイツはただ……』
『
侍たちの中の一人が駆け寄ってきた。
突き飛ばされた少年は、足をすべらせて、増水した川に落ちてしまった。
あっという間に流されていってしまう。
『うわあああああああ!』
カッパが泣き叫んだ。
男の子を助けようと川に飛び込むその瞬間――
侍が振りかざした刀が。
カッパの右ひじに。
あまりにも
そこで、
え?
ここで、終わり?
今のは……何?
「これは……これは、カワグマのものがたり」
メロリが言った。
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