隣の幼馴染み

第17話 碧葉朱音◯◯説

「浅久くんさ。もしかしてかなりの変態さんだったりする？」

「いや、それは誤解だ」

「だが、誤解で逃げられない決定的瞬間を私達は目撃してしまったが？」

「現行犯ってやつですね」

これは癖なのだ。気になってしまったら気になった物や人を凝視してしまうのだ。

その結果、今回の朱音の胸に目がいってしまうという不幸な事故になったわけで………。

いや…別に朱音の胸に興味があったというわけではない。ただ今見てる胸がDカップだとは思えなかったから気になってしまっただけだ。

うん。決して下心は無い………はず。と、思いたい。いいえ、嘘をつきました。割とある。

「朱音ちゃんから見て今のは黒？白？」

「真っ黒」

「俺の信用全く無いのかよ！」

「当たり前でしょ。この前の前科もあるんだし」

「お前……それ掘り返さなくてもいいだろ。あれの半分はお前にも非があるからな」

「それは納得いかない。あれは完全にけんちゃんが悪い！」

あぁ。やめだ。この言い争いは無益すぎる。

「朱音ちゃん。浅久くんの前科ってなんのこと？もしかして浅久くんって犯罪者！？」

「待て待て。そんなわけ…」

「犯罪者です」

「何でだよ！」

「え！？そんな……浅久くんが犯罪者だったなんて！」

「だから違うって！誤解を招きすぎだ！」

朱音の発言に反応して玖乃さんがあたふたしてる中、那岐さんは冷静に正解を導きだした。

「つまりは浅久くんが朱音に対して何かしらしでかしたということだろう？それが何かは分からんが」

「さすが那岐さん。洞察力すごいな」

「ところで朱音。その前科とは種類でいうと何かな？」

「う～ん……。いろいろあるからよく分からないけど……とりあえず変態」

「なるほど。女の敵だったか。死ね」

急に敵に寝返ったぞこの人。片桐が浴びていた殺気はこれほどのものだったのか。一体この人何者なの？

「いや、それには異議ある。俺のは偶然というか不幸な事故だ。それよりも、朱音が痴女説というのが濃厚だ」

「は！？」

「え！？朱音ちゃんって学校では大人しめなのに普段は肉食系なの！？」

「うむ。そのギャップに世の男共はやられるのだろうな。はい、そこのクソ男代表。そんな朱音をどう思う？」

「普段は大人しめ。しかし家では肉食……。最高っす！！」

さすが片桐。ぶれないな。

「待って！！待ってよ！私そんなんじゃないから！！裏表なんかないよ！」

「と、被告は訴えているが？浅久検事」

「いえ、彼女は嘘をついています。痴女かどうかはさておき、裏表はあります」

「はい！？何を言って…！」

「被告は静粛に。それでは浅久検事。証拠はありますか？」

「佐久蘭ちゃん、役に入り込んでる…」

確かに。那岐さんってお嬢様的なとこがあって少し話しかけにくいイメージだけど、意外とフレンドリーだよな。

「そうですねぇ。証拠とまではいきませんが、俺の家でバスタオル姿で風呂から上がってくるくらいには痴女ですね」

「いや、だからそれは………！」

「へ、へ～……意外と決定的な証言……というか、そんなことあったんだ……。これは痴女説もあり得る？」

「おー！まじか！あの碧葉朱音が実は肉食系痴女！意外とグイグイ系なのかぁ！そんな朱音ちゃんに誘惑された日にゃ、俺はもう……耐えられないなぁ……」

「ちょっと、けんちゃん！？悪ふざけならもうやめてくれない！？風評被害だよ！！！」

ま、朱音いじめるのもこのくらいにしとくか。あまり言うと片桐がマジになりそうだし。

「はいはい。悪かったよ。痴女説なんてありませんよ」

「え？そうなの？な～んだ。全部作り話かぁ」

「何で玖乃さんはがっかりしてるの！？」

「んだよ。つまらない作り話しやがって。それが本当の話なら、今日にでも朱音ちゃんの家に行こうと思ったのによ～」

「ほう。それは聞き捨てならないな。朱音に指一本でも触れてみろ？視界が赤く染まるぞ？」

「ほう。できるならやってみるがいいさ。俺を邪魔するものは全て排除するのみ！」

また始まった。痴話喧嘩。この二人、絶対仲良いでしょ。

「もう……最悪。何でペラペラそんなことばかり言うかな？」

「お返しさ。健全な俺を変態呼ばわりしたからな」

「はい！？私だって言おうと思えばあのこと（私の下着を見てたこと）言えたんだからね！？でもそのこと言うとさすがにやり過ぎだと思ったから黙ってたのに！！」

「まあ良いだろ？良い話題になったじゃないか」

「良くない！」

「普段の二人はこんなに仲良かったんだね」

「まったくだな。ついこの前までのあの関係はなんだったのやら」

知り合い以上友達未満といった関係ですね。

「まあいい。もうすぐ昼休みも終わるし、戻るぞ」

「もうそんな時間か。楽しい時間ってのはすぐ過ぎちゃいますなぁ」

「老人くさいこと言ってねえで早く戻るぞ」

その後、すぐに教室に戻ると、午後の授業が始まった。

「さて、授業始めるぞ。それじゃ最初にプリントを配るから、おい浅久。配ってくれ」

「また唐突にきますね」

「あん？なんか文句あるなら言ってみろ」

「あ、いえ。何でもないです」

5時間目は五十嵐先生による数学だった。

そしてなぜか先生にこき使われる俺であった。