第16話 屋上でもう一度
「だって、二人は幼馴染みなんでしょ?」
「だからって何でそうなるの!?」
「あれ?秘密にしてたのは二人が付き合ってるってことを隠すためじゃなかったの?」
「おいおいマジかよ!答えろこの裏切り野郎!今の話は本当なのかぁああ!!?」
「違うって言ってるだろ」
結局面倒なことになってしまった。玖乃さんはトラブルメーカーのようだ。
その後、この玖乃さんの発言が原因となり、俺と朱音が付き合っているという噂が学校中に流れ始めたのだった。
後日。
「話すべきじゃなかったな。やっぱ人は信用しないに限る」
「いや、別に人間不信にまでならなくても良くない?」
「いや、少なくとも3年くらいは知り合っていないと信用できないな。今日のことで確信した」
「あはは……それだと高校生活の間ずっと信頼ないじゃん……」
俺達の噂が流れ始めたことがきっかけになり、俺と朱音は学校でも普通に話すようになった。
本当なら誤解を解くためにも少し距離を置いた方が良いのかもしれないが、それだと逆に噂されそうだからという朱音の案に共感を得てこのようになっている。
「ったく、玖乃さんのせいで俺の穏やかな生活が……」
「まあ、こんなことになるなんて思いもしなかったしね。なんかごめんね。最初から玖乃さん達には言っておけばよかったかも」
「いや、それはお互い様だ。俺も黙ってたし。それに、あの玖乃さんのことだから遅かれ早かれ同じ結果になったさ」
というより、俺達がこの学校で再会したときにお互いに知らない顔してたのが間違いだったのかも。
「お待たせ~!お昼ご飯の調達完了しました!」
「遅くなって悪かったわね。奏芽が2つのパンのうちどっちを買うかずっと迷っていたから」
「ま、結局2つとも買っちゃったけどね!」
今は昼休み。俺達は屋上に集まって昼食をとろうとしていた。前までは片桐に誘われるままに二人で食べたり、俺だけで食べたりしていたが、昨日からは那岐さんと玖乃さん、そして朱音と一緒に食べることになった。
なぜかと言われたら俺にも分からん。
なぜか玖乃さん達が俺を誘ってくるのだ。どうせ朱音とも普通に話してるし俺達の関係もバレている。断る理由も無いし大人しく一緒にいるだけだ。
「ねえねえ、二人とも知ってる!?あの噂!」
「噂って?」
「二人の噂だよ~!なんかね!いろんな尾ひれがくっついちゃって面白くなってるんだよ!」
「人の噂で面白がるな」
しかもそれは誤解だし、尾ひれなんてついてたまるか。
「まあまあ、聞きなよ~。二人は実は義兄妹だったって噂!」
「「は?」」
「それは禁断の恋だった。義理とはいえ、一緒に生まれ育った兄妹。しかしある時、二人は気付いてしまったのです。私ってお兄ちゃんのこと……。俺ってやっぱりあいつのこと……」
…………。
「待て。その話いつまで続くんだ?」
「まだ序章だよ?」
「ならその話はもう終わりだ。尾ひれというよりただの作り話じゃないか」
「いいえ。それ以前にそんな噂流れてないわよ。奏芽の作り話よ」
なんとなくそんな気はしたよ。
「あはは!でもこんな噂は本当に流れてるよ。朱音ちゃんと浅久くんはもう同棲してる、とかね。なんでも、朱音ちゃんが浅久くんの家に入るところを見たって人がいてね」
「え?それって……」
「この前のこと……かな?」
「でも、お隣さん同士だからね~。ほとんど同棲と同じでしょ」
この人は隣人の意味を分かっておられるのだろうか。
「だが、その目撃情報は本当なのか?」
「ああ、それは本当だ。この前の雨の日はいろいろあって雨宿りがてら朱音もうちに寄ることになったんだ」
本当にあの時はいろいろあったよ……。何度も朱音からビンタを食らわせられたし。
まあ、それに見合った報酬は得られたけどな……。それにしても……Dねぇ……。
「…………」
制服の上からだと、そんな大きく見えないけどな。あの時の朱音……なんだか恥ずかしそうにもしてたし……もしかして胸が大きいことがコンプレックスとか?
たまに居るよな。胸が大きいことに困ってる女子。そして何もしてないのに貧乳キャラから反感を買っちゃうやつ。(漫画やラノベの読みすぎ脳)
まあ男に胸のサイズ見られたら誰でも恥ずかしいだろうけど。
「…………」
「えっと………け、けんちゃん……?」
「ほう。見かけによらず大胆だな」
「ちょいちょい、浅久くんや。そんな堂々と朱音ちゃんの胸を凝視しちゃって、どうしたのかなぁ?」
「え?……あ…」
ふと我に帰ると俺の視線は朱音の胸に向いていた。つい気になると凝視してしまう癖が出てしまったようだ。それもまさか朱音の胸を見てたなんて……。ただの変態じゃないか。
「いや、なんというか……。ごめん」
としか言いようがない……。
というか、このパターンって……。
「この……バカァ!!」
この数日の間に俺はビンタを4回も食らったのだった。
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