あたしの未練
ヨッパライ天使の話だと、あたしみたいに急に事故って死んだ人が、未練が残って地縛霊にならないように、天国にちゃんと送るために、彼(?)は来たらしい。
「オラが本当の姿で出ると、みんなおっかながってますますパニックになっからよ。」
それで、死んだ人にとって身近な何かしらのなんかに取り憑いて出るみたい。
あたしの場合は、鞄についてたヨッパライ人形を見て、これだ、って思ったんだって。
「取り憑くとか出るとか、人を幽霊みたいに言うなって!」
幽霊なのはあたしのほうだったんだった。
「はああ、こんないきなり死ぬなんてね……。」
「しかたねえよ。世の中ってのは、何が起こるかわかんねえもんだからよ。」
「こうなる運命だった、とかいうんじゃないんだね?」
「おう。人間はよく運命だの何だの言うけど、違うんだよな。神様だってそこまでは決めらんねえよ。いくらなんでも手が回りきらん。」
「たしかに……ひとりひとり全員の運命決めて回るとか、あたしだったら途中で面倒くさくなってコピペしそう。」
「そういうことよ。逆によ、あんたはここで死ぬ運命だったんだよって言われたら、どう思う? 嫌だろ?」
「なにそれ、って言う。」
「だろー? ヒック!」
しゃっくりしてる。ヨッパライのふりしてるのかな? それっているのかな?
「……そんでな、おめえの未練の話なんだけどな?」
「う、うん……。」
未練、か……。
正直、半分以上、自分が死んだこと、受け入れた気にはなってる。
お母さんとか、お兄ちゃんとか、あんな悲しい顔してるの見たら、あたしやっぱ死んじゃったんだなって、逆に思わされたというか、痛感した。
明日になったら、学校でもみんな知らされて……チーコ、ユカ……ほんっと、ごめん……。
……見たくないなあ、みんなの悲しい顔。
――本当にすみません、非常識だとは思ったんですが、……
――いえ、いえ……ありがとうございます、まりえが本当、とんだご迷惑を……
うちのお母さんと店長が、部屋から出てきて何かそう話してるのが見えた。
店長はうちのお母さんに深々とお辞儀して、そして、あたしとヨッパライ天使のいるこっちに歩いてきた。
もちろん、店長にはあたしたちは見えてない。
でも、あたしには店長は見えてる。
だから、目で追う。
店長は、あたしたちを通り越して、病院の出口に向かってった。
順番つけるつもりなんかないんだけど……でもやっぱり、あたしが一番未練だって思うのは……。
「おめえの未練ってのは……」
「うん……。」
店長に……店長と……もうちょっとだけ……!
「ひとりだけ、ひとりだけだけど、未練のある相手と、話せっぞ?」
店長の後をあたしはまた追って歩き出しちゃったけど、ヨッパライ天使はそんなあたしを止めたりはしないで、逆にそんなことを言ってくる。
「そうなの……?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。