第3話 チキンの行方
「こつん、こつん。」
「・・・・・・ん・・・・・・んん。」
葉月は目を覚まそうとしていた。
「こつん、こつん。」
「・・・・・・む!? この感覚は!?」
寝ぼけながらも何かに気がついた葉月は目が覚めた。
「突くな! 血が出るだろうが!」
葉月は寝ているとチキンに頭を突かれるようだ。
「コケー!」
チキンは葉月を気に入っている。
「あれ? ちゃんとした部屋で寝ている?」
葉月は布団で眠っていたのです。
「お目覚めですか?」
そこに一人の古来日本風の和服を着た少年が現れる。
「カッコイイ!」
葉月は少年に恋をした。
「初めまして。葉月。」
「どうして私の名前を!? まさか!? ストーカー!?」
「ストーカー? それは何ですか?」
「ええー!? ストーカーを知らないの!?」
古き良き日本にストーカーなどという下品な言葉はなかった。
「はっはっはっ。葉月はとても面白い人のようですね。」
少し年上の少年は葉月を初めて見る人種のようで面白かった。
「あなたは誰ですか?」
失礼に笑う人に葉月は尋ねてみた。
「私は干支守をしている酉月と申します。」
現れた少年は干支守の酉月。
「干支守?」
「はい。干支をペットとして飼う者のことを干支守といいます。私は酉の干支守なので、ニワトリを飼っています。」
「コケー!」
酉月はチキンの飼い主であった。
「あなたがチキンの飼い主さんだったんですね。」
「コケー!」
チキンも酉月に懐いている。
「お別れね。チキン。今までありがとう。」
悲しげな表情を浮かべ、じんわりする葉月。
「コケ。」
神妙な感情はニワトリにも伝わり、じんわりする葉月。
「最後にあなたを丸焼きにして食べれなかったことだけが後悔よ。」
葉月は友情よりも食欲だった。
「コケ!?」
同情した自分がバカだったと思い知ったチキン。
「これからはニワトリは葉月のものですよ。」
「え!?」
酉月に想定外のことを言われて、チキンの捕獲を一時休戦する葉月。
「あなたは八月に選ばれた者なのだから。」
「私が八月に選ばれた者? まあ、確かに珍しい名字ですけどね。」
葉月の苗字は八月。まさに八月のために生まれた運命の子。
「これからは、あなたが八月の干支守です。ニワトリのことを頼みましたよ。」
「ということは!?」
ギロっとチキンを不敵に見つめる葉月。
「コケッ!?」
再び身の危険を感じるチキン。
「フライドチキンにしてくれるわー! 待て! チキン!」
「コケー!? こ、こ、こ、コケー!?」
例えると鬼婆に追いかけられる小坊主である。
「いや~、実に葉月は面白い。」
酉月は明るくて元気な葉月を見ているだけで心がほっこりした。
「待ちなさい! チキン! 飼い主の言うことは素直に聞きなさい!」
「コケー!? コケコッコー!?」
八月の干支守になった葉月は、チキンを飼いならすことができるのだろうか?
つづく。
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