神保町ー新宿

パラレル新宿線を現在のところまで読み進めた浩は、さらに念じてみる。

「…」「…」「…」なかなか次のページが出ない「…」「…」「…」「…」浩はどんどん集中していく「…」「…」「…」「…」「…」


浩はつり革に捕まり一心不乱に念じていた。

すると何処からともなく子猫の鳴き声が聞こえてきた、「まさかこの電車にも猫おじさんが!」と浩は辺りを見回す。

すると、となりに立っている女性の側面がメッシュに成っているリュックから2匹の子猫がこちらを伺って鳴いているのを発見する。

なんだかその子猫たちは、一生懸命全力で生きていて、今までに浩が出会った全ての生物の内で一番まともな生き物であるように彼には感じられた。

子猫たちは何かを訴えるように浩を見つめ鳴いている。

浩を同族と勘違いして何かを託しているようにも感じられた、彼らはこの先に起こる不穏な未来を察知して、その回避を浩に託していたのだった。

浩の生きる時代には、国と国との争いが頻発していた。やれ経済だ~やれ宗教だ~やれ人種だ~と言う具合に、それらを超越した個人的な存在としてネコ族は君臨していた。


「?」「?」「?」ここまで読み終え浩は、実際に書いてある事が起こった。

「?」「?」「?」「ネコ族の不穏な未来とはなんだろう?」「なにかしら全体的なことかしら?」などと浩はおもった。

そんな全体的な事について浩は思いを巡らせる。

パラレル新宿線を読めば答えが書いてあるかもしれないが、次のページを念じるのに、実際自分で考えるくらいのエネルギーを使うのであんまり意味がないと浩は感じたのだった。

「全体的な事、全体的な事」「死」「戦争かなにかが起こるのかな?」と浩は適当に結論づけた、リュックを背負った女の人は新宿三丁目で降りてしまい、浩は子猫たちからのメッセージを胸に展覧会「明日も雲の上にきてくれるかな!?」に臨む気持ちが高まっていくのを感じていた。

全体的な死、思えば浩はずっと死んだようなものだった。いつからか全体的な社会の接点を閉ざし、自分の部屋で全体的な性欲を処理し、ますます死が近づいてくるのをうっすらと感じていた。家族はいつからか全体を象徴するようなものとなって行き、死との距離が近づいていると感じ、あらゆる事に過敏に成っていくようだった。毎日みるテレビも、まるでそれは戦争のように感じられるほどであった。


地下鉄はついに新宿駅に到着した。

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