森下
新宿線は住吉を出て現代美術館の最寄りの菊川に到着する、浩は「展覧会の時間にはずいぶん早いな」と、次の森下で大江戸線に乗り換えて都内観光でもして行こうかと思う。
森下までの数分間、彼は美里の事を考えていた。「不思議だな、まだ2回しか会ってないのに昔から知っている気がする」と浩は思う。
森下に到着する、この駅は少し変わった構造だった。大江戸線に乗り換えるのに長い、或いは高い、エレベーターもしくはエスカレーターに乗り、一回地上階に上がり、それからまた長い脇に階段があるエスカレーターを下らないと、乗り換えのホームに到着しないようになっていた。
浩がエスカレーターのある後方へ向かうと、転びマンが現れた!転びマンは浩の認知する前に転んでいた、浩は何か変な視線を感じ転びマンと目が合ってしまう、転びマンは「お前のせいで転んだ」と言うような恨めしいような目付きで、いや、浩を見ていたら何かが抜け落ちて、バランスを崩して転んだと言うような不思議さのまじった、それまで何かを呪うような目付きで浩を見ていた後にそんなことが起こった、と言うような顔つきで浩を見ていた。
浩は視線をそらして、エスカレーターの奥に設置されているエレベーターへと向かう、内心また変なやつが現れたと思っていた、「類は友を呼ぶじゃないけど、なんか関係あるのかな?」と自分のおかしさにも感ずいて。
エレベーターで上の階に上がる、通勤客がほとんどの7・8人、私服の浩は目立つのか何となく妙な念が届く。
エレベータードアが開く、皆一様に先を急いでいる様子だ、人混みの中に転びマンがいた、彼は何の目的でそこにいるのだろうと浩は考える「どっかのニュースで体当たり男の事を読んだけどその類いかな」などと考えながらぼっと転びマンを見ていると、階段付近で目が合ってしまう。
ズサッ「あぁ~うっぅうっうぁ」ゴロォッゴロゴロゴロッ「ウッァッ」コロンゴロン、皆一様に避ける、見事に長い階段を転げ落ちた、転びマンは恨めしそうに下階で浩の方に目をやる、浩は怖くなり、新宿線のホームへと引き返した。
新宿線の車両内で、つり革につかまりながら浩は「転びマンはどうやって生活しているのだろう」などと考えていた、「世の中にはどうやって生活しているのか想像できない人々が沢山いる、そして想像のつかない事は、大概悪いことになる」などと少し哲学的な思いにいたるとお腹が空いてきた、ドトール農園ではコーヒーしか飲まなかったのでそろそろ1日近く何も食べていないことになる、「岩本町で降りて、秋葉原で何か食べていこう」と浩は決心する。
秋葉原には比較的最近できた、飲食施設がある、企業の合同説明会なども行われる。豪華客船を模したとも思われるその施設の串揚げ屋に、家族で赴いた事があったのだった。
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