東大島ー住吉
少し強くなってきた雨に濡れ駅の近くのコンビニに入ると、わかんねぇ~だろうなおじさんに遭遇した。浩を横目でチラチラ見ながら、ひたすら「わっかんねぇ~だろうなぁ~わっかんねぇ~だろうなぁ~」とブツブツ言っている。
浩は行く先々に出没するわかんねぇ~だろうなおじさんに、疎ましさと恐怖を覚えるようになっていた。
「野郎このナイフでぶっ殺してやろうかな」などと思ったその時、そとがフラッシュを焚かれたように光に満ち、次の瞬間ドォゴォゴゴゴォドゥルドゥルァ~と雷が落ちた。
浩は驚き、傘も買わずにコンビニを駆け出て駅へと向かう。
濡れた服で笹塚行きの列車の座席に座っていると、なんだか気分が悪くなっていった。
「もし、ほんとうにわかんねぇ~だろうなおじさんを刺していたらどうなったろう」浩は思った
「あの時は、ほんとに殺る気だった」浩は不思議に思う、なぜそんなに殺る気になったのか自分でも見当がつかなかったのである。
それから彼は、バタフライナイフをポケットの上から触る。鋭利な刃がしまわれている長方形の物体、限りなく冷たく感じた。
「あの人形もこんな風に冷たいのかな、もしあれがほんとの死体だったら…」浩は恐ろしくなり益々冷えていく。
身も心も冷えきった浩には、父が危篤であると言う現実はにわかに受け入れがたいものであった、携帯で時間を確かめると午後3時を回っていた。
地下鉄は大島を過ぎ西大島に向かう。「本当に父が危篤であるのなら、僕はいったいどうすればいいのか?」そんな現実を受け入れられない浩は「このまま失踪してしまおうか?」などと思った。「その方が父も母も気が楽だろう」とすら思ったのである。
浩の逃げ癖がついたのは、中学1年の時の失恋からであった。浩の好きな女の子はヤンキーの事が好きで、そのヤンキーは、ことあるごとに浩を虐めていたのである。
浩は、そんな現実が受け入れられず、いつしか自宅に引きこもるようになっていったのだった。
その事実を知ったのは、彼女の立ち話がきっかけだった。
「はてブ面白いよねぇ…」
はじめて聞く単語をネットで検索する浩、どうやらはてなブックマークと言うサイトの事らしい。
調べると、そのサイトに関連して殺人事件まで起きたことがあると言う、曰く付きのサイトだった。
トップページに色々な記事がブックマーク数と共に表示され、その記事にブックマーカーが、ああでもないこうでもないとコメントを残していた。
それらの記事のなかに、匿名ブログがあり書いた人は増田と呼ばれていた。
そして、彼女らしき増田があったのだ。その増田で浩はボロクソに言われヤンキーはあげあげで言及されていた。
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