第10話 僕の勇気と探求部
いつも通りの昼休みを迎えた僕らは、二人で昼食を摂っていた。
「あっひゃっひゃっひゃっ! マジおもしれー。くく、笑いすぎて腹が痛い」
昨日の彼女を追いかけたことを話した結果がこれである。心の底から笑っているのか、本当にお腹を抱えて息をするのも辛そうなくらいにしばらく笑い続けていた。
「そこまでに笑う……?」
ありのままを話しただけだが、それを笑い事で済まされると少し腹が立って自分の語気が強くなったのがわかった。
「いや悪い。
笑いをこらえきれずにまた噴き出していた。自分でツボに入ったのか同じことをつぶやきながら、目じりに浮かんだ涙を指で拭っていた。
ひ、酷すぎる。僕なりに頑張った結果を話しただけなのに……。
それにしても慧悟は僕を手伝ってくれるって言ってなかったっけ? 別に全てを当てにしていたつもりではないけれど、ここまでされると少し傷つくなぁ。
「でもさ、その努力のおかげで一つわかったことがあんだろ?」
唐突に慧悟がそんなことを言った。今ひとつピンとこず、何と視線で問う。
「例の子はこの学校の生徒だってことだよ。帰りに校舎内で会ってんだからな」
言われて、あという口のままフリーズした。それもそうだ。この学校の生徒かもわからずに探していたところに、下校途中の彼女を見つけたのだから。
ということは、最悪の場合、この学校の生徒全員を見て回れば必ず会えるということだ。そんなことしていたらいくら時間があっても足りない。僕の知らないところで交通事故に遭う未来が確定する方がずっと高い。それにあんなことをしてしまったからには、顔を合わせたら逃げられる線もあるし。
「この学校の生徒は全部で千人超えてるんだよ? 一人一人捜すとなると……」
思ったことをそのまま慧悟に返した。
最終的に彼女を見つけれる可能性はあるわけだけど、それは無理じゃないかと口外で示した。
「だからこその探求部があんだろ?」
「え?」
どうしてそこで探求部に繋がるんだろうか。意味が分からないので素直に聞き返した。
「生徒に関するお悩みとかたまーに探求部で取り扱ってんだよ。顧問の先生が持ってきたりしてな。まあそこの情報網使えば比較的簡単だろ? 事情を話せば部長も
「ああ、なるほど」
思ったよりしっかりとしたサポートがあったようで、なるほどと納得してしまった。僕が視たのは後ろ姿だけだし、それに追いかけてぶつかった時も焦っていたので改めてしっかりと彼女を確認することはなかった。
記憶をたどって、少し思い出そうとすると
「バストサイズわかるよな?」
「…………」
にやにやした視線が飛んでくる。
知ってるわけないじゃないか。仮にそれを知っていたとして、それでどうやって彼女を特定できるというのだ。
「じょ、冗談だっての。だからそんな目で見るなよ………」
じとーっとした目線で応えてやると、その気まずそうな雰囲気と会話の流れを切り替えるためか、慧悟は幾らか咳払いをした。
「とにかく! 放課後になったら部室へ行こう。とりあえず部長にも相談しとくからさ」
弁解するかのように早口で言ってのけると、食べていた弁当の残りを一気に駆け込んだ。そのままお茶をのどに流し込んで済ました顔を浮かべた。
まったく。こういうところはかなわないなぁ。
ふざけているようですぐフォローできるのは、僕のことをちゃんと理解してるからなのだろう。
嘆息に感謝を乗せて、僕は残っていたパンをかじった。
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