002 つまり残ってたらヤバいって事?

「今ならばまだ送り還すことは可能です!今から準備させますのでお待ちください!」


俺たちを召喚したらしいルドーズ王は部下らしき人に何やら指示している。

あれー?思ってたのと違うんだけど……?

こういうのって魔王を倒したらとか、世界のどこかにあるゲート的なものを見つけないと帰れないやつじゃないの?

悠司も気になったようで王様に話しかける。

なんであいつは緊張とかしねぇんだろう。


「えーっと?召喚したら魔王を倒さないと戻れないとかじゃねえのか?そんな簡単に戻せるのか?」


「一方的に召喚しておいて元の世界にお還しできないなど!とんでもありません!勿論この世界を救って頂きたいとは思います。ですがお一人でもこの召喚を嫌がる方が居ればそのままにして良いはずはありますまい。」


ルドーズ王はそう言って先ほど元の世界に戻せと悲鳴を上げた真田さんへと歩み寄る。


「突然召喚してしまい申し訳ございませんでした。勇者様方を召喚んだゲートはまだ閉じきっておりません。今ならば間に合います、元の世界にお戻りください」


頭を下げるルドーズ王はなんだか哀愁が漂ってる感じがした。


「ま、待ってくれよ!それじゃあこの世界の危機はどうすんだよ!俺らの冒険は?!」


空気を読まないバカが一人。

まあ正直そのことについては俺も気になっていた。


「ええ、勿論こういう事は何度かあると想定しておりました。ですから次の召喚の準備もございます。ご心配なさらずとも大丈夫です。流石、勇者様はお優しいですな」


「えっと……いやそういう事じゃ……」


ルドーズ王に微笑みかけられた悠司はなんか知らんがどもっている。

なんなんだあのバカは。

呆れていたのもつかの間、なんだかルドーズ王の目が光った。気がした。

目が慣れてきたとはいえ周りが暗いからな、気のせいかも。


「戻りたいという勇者様方は勿論お還しいたします!ただし、残ってこの世界を救おうとしてくださる勇気ある方々も一緒にお還り願います。先ほど言ったように次の召喚の準備は整っておるのですが、あなた様方とは違う世界の方を召喚する可能性も大いにございます。その場合は大きな問題が発生することもございましょう。最悪残っていただいた勇者様が消滅する事もあるかも知れません。ですので、皆様の救おうとするお気持ちだけで十分でございます。

それでは送還の最後の準備をいたしますので皆様しばしお待ちを」


そう言ってルドーズ王は先ほどの部下らしき人と会話をしに後ろの方に下がっていく。

予想だにしなかった言葉に周りのクラスメイトはざわつき始めた。

消滅するかもなんて聞いたら流石にビビる。

そしていつの間にか隣に来ていた悠司バカが声を掛けてきた。


「なあ開斗かいと、今の話ってさ……」


「ああ、俺も残ろうなんて考えていたが流石にヤバそうだよな」


「いや、えっと……つまり残ってたらヤバいって事?」


どうやらバカなようだ。


「……この世界では次の勇者召喚の準備は出来てるらしいがここまでは理解してるな?」


「ああ、俺らの仲間が増えるってことだよな?」


なんなのこのバカ。


「そうじゃない。俺らが全員還った後に別のやつらが来るんだ。この世界に俺らが残ってると体が消えたりとかヤバい事になるんだと」


「マジかよ!?体消えんの?怖ッ!早く帰してもらおうぜ!」


適当な説明ではあるが理解してくれたようで何より。

丁度ルドーズ王の方も準備ができたようで部下らしき人たちと共に俺らの周りを囲んだ。

そして悠司に近付き封筒の様な物を渡していた。


「今は説明の時間がありません、どうか元の世界でお読みください。

では、これより皆様を元の世界にお還しいたします!突然喚びだしておいて何もできませんでしたが、我らの世界を救おうとして下さったその勇気、きっと後代まで語り継ぎましょうぞ!」


俺らを囲んだ人達が何やら呪文を唱え始めると同時に、足元が光り始めた。

多分、こっちの世界に召喚された時もこんな感じに光ってたんだろうな。


「どうか皆様の行く末に光多からんことを!」


その声を最後に世界が白に染まった。




―――――――――――――




ゆっくりと目を開けると、確かに俺らの教室だった。

どうやら5時間目の授業時間になっていたようで先生もいた。

突然現れた俺らを見て召喚されなかった残りのクラスメイトも先生も目を見開いていた。


――グゥ~


そういや昼飯食ってなかったなぁ……

悠司の腹の音が鳴ったのを聞いてぼんやりとそんな事を考えた。


「……お前達!どういう悪戯か知らんがさっさと席に就け!!授業中だぞ!」




―――――――――――――


結論から言うと突然俺らが現れたのはで済まされた様だ。

他のクラスメイトから「どうやったんだよ?」と聞かれたがまさか「異世界に召喚されてました」とは答えられないので、召喚者一同はぐらかす事に全力だった。

その中でただ一人「俺らは異世界に召喚されていたんだ」と声をあげる者が。

勿論悠司の事である。

だが悲しいかな、バカなのはいつもの事であり思い込みも激しい男の妄想話を信じる人は現れないのであった。


そしてその悠司がこっちに戻ってきたときに手に持っていた封筒はルドーズ王からの手紙だった。

何故悠司に渡したのかは分からんが、その手紙の内容を要約するとこうだ。


・まず突然召喚した事に対する謝罪。

・そして世界を救おうとする事への賛辞。

・ステータス、勇者の特別な力の事の説明。


最後のステータスとかの説明はこちらとしても気になっていたのでありがたかった。

勇者として得たスキルならこっちの世界で使うと、それこそラノベの世界みたくなるしな。

期待と不安の入り混じった気持ちで手紙を読み進めていくと、最後の方に予想外の言葉が書かれていた。


〈こちらの世界で皆様が得たスキルですが、元の世界に戻ると消えてしまうかも知れません。

 恐らくですが世界のルールや根源が違うと、こちらの世界のものは別の世界に馴染めず不具合を起こす可能性があります。

 可能性としてはスキルが消える、もしくは使えたとしても力が極めて抑えられるでしょう。

 それにもし十全に使えたとしても使い方によっては世界のバランスが崩れる事もありましょう。

 勇者として召喚された皆様がそんな事をする訳が無いと思いますが念のためです。


 それでは、皆様の行く末に光多からんことを世界が違えど願っております。〉





そう、どうやらスキルが消えるらしい。

この手紙も翻訳スキルで読んでると思うから、スキルが消えたら読めなくなるんだろうな。

あとのスキルは使い方がまるで分からないし、むしろ悠司バカとかが問題起こさないように消えてくれた方が助かるかもな。

白昼夢の様なものだったとして時間が経てば笑い話にも出来るだろう。




そして1週間あの時召喚されたクラスメイトは全員スキルが消え、「ステータス」と唱えても画面が浮かび上がることは無くなっていた。








俺以外は

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