第5話 水面と空
機嫌が悪い。湿った怒りを飲み下そうと努力している。水面に映る私が自然な笑顔を作れるまで、二人に会いたくない。どうせ今も私に聞かせたくない話をしている。そうに違いないのだ。
「王都に行くから。出発は明日。今日中に荷物をまとめて」
昨日。起きぬけ、エアが言ってきた。私は出発が差し迫っていることにだけ驚いた。そろそろ何か起こるだろうな、と察してはいた。
ここ半年、手紙を貰っていないからだ。
エアの友達が王都に住んでいるらしく、定期的に服や穀物、本などが送られてくる。
月初めの朝ドアを開けると、家の前にぽつねんと包みがある。前日には無かったものだ。誰がここまで運んでいるのかは分からない。私が三人は入り込める大きさに驚いたかと思えば、次の月は両手で持てる程度のこともあった。包みの上には決まって、赤い蝋で糊付けされた茶封筒。物資を確かめ、私に宛てられた部分を読み、近況報告とお礼を紙一枚に込める。そして夜、玄関先に返事を吊り下げておき、朝起きたら無くなっていることを確認する。ここまでが私の月一の楽しみだった。私たちの文通友達は、よく私の努力を褒めてくれた。その上魔法に詳しかった。エアの感覚的な教え方が行き詰まった時、彼…もしかすると彼女にアドバイスを求めると、分かりやすいイラスト付きの説明が返ってくる。温かな尊敬を込めて先生、と呼んでいた。
その先生から返事が来ない。荷物は相変わらず届くが、最小限の生活用品のみ。同時にエアが夜な夜な手紙を書くようになった。深夜、静かにドアが開く音。エアの服とシーツの繊維との摩擦音。ペンが紙を滑る音。紙のガサガサする音。ドアの閉まる音。また繊維の摩擦音。私は気づかないふりをしていたが、二日に一度は必ず一連を聞いた。誰かから手紙を受け取り、読み、その場で返事を書いてまた同じ誰かに託しているとしか思えなかった。そんな夜が続いた朝方、喉の渇きで起きた時に、書き物机の上にある手紙に気付いてしまった。きっと片付け忘れたのね、と素通りしようとするも好奇心に逆えず、ちらっと読もうとした。
馴染み深い先生の筆跡だったが、意味が取れない。名詞。動詞。文法。いつも使っている言葉だ。読めるはずなのに、いざ目で追うと頭に入ってこない。頭が理解することを拒んでいる感じがした。私は悟る。この手紙はエア以外が読むものではないのだ。仕組みは分かる。幻覚魔法の応用だろう。読ませたい相手以外に向けられる認識阻害…目から拾った情報を頭がうまく処理できないようにするのだ。
先生が施したのだろう。力を持て余すエアにこんな細かい芸当は無理だ。私は自分が傷ついていると知りつつ、見なかったことにしてベッドに戻った。結局水は飲まなかった。
カイルが竜もろとも墜落してきた時も、エアは知っていた風だった。同時多発的というか、他にも何か落ちてきたような音がしたのに、迷わずカイルと彼の竜だけを助けた。刃物で切り裂かれたような傷が彼らの全身についていたことに驚き、ベッドまで運んだりしているうち、うやむやになってしまったが。
先月届いた荷物に消毒液と大量の包帯があったのも偶然ではない気がする。まるで誰かの手当てをする予定があったみたいだ。
先生は、私たちの生活を無償で支えてくれているように見えた。そんなにエアとの友情が熱いのかしらと不思議に思っていたけれど、長年の謎がやっと解けた気持ちだ。彼らはお互いを利用して何かをやろうとしている。その何かにはカイルも関係している。そして私はただ、王都に連れて行かれる。
冗談じゃない。
確かに私は王都に行きたいけれど、今まで何度も伝えてきたことだ。その度にエアは生返事。繰り返し言い過ぎるのはまるで今の暮らしが嫌みたいだな、と遠慮していた私が馬鹿みたいじゃないか。気を遣って、先生宛にも書かないようにしていたのに。
私は、平たい石を見繕って小川に投げた。跳ねていく。五回。この光景も今日で見納めだ。周りには木立しかない。見上げても葉越しの淡い光があるだけ。この小川を辿ったことすらなく、家の周りと洗い場が私の活動範囲だった。あまりにも狭い世界で生きてきた自覚がある。王都に行くのは楽しみだ。多くの人と関わりたい。そう心から思っているはずなのに、恐怖のような落ち着かなさを感じる。
それにしてもエア。腹が立つ。独断もいい加減にしてほしい。慣れっこだから、この程度では怒らない自信があったけれど、カイルが来てから我慢できないほど酷くなった。怖いくらいに黙り込んでいるかと思えば、見たことがないほど楽しそうな顔もする。そんなエアを見ていると複雑な気持ちを通り越して怒りすら覚える。カイルは背が高くて鼻筋が通っていて、優しく話をしてくれるから私も浮かれていた。そこは認めるけど、まるで私と暮らすのがつまらなかったみたいじゃない、エア。
決め手は一昨日。散々使いどころに制限をかけておいて、カイルに魔法を見せてやれとは何だったのか。魔法ならエアがいくらでも使えるのに、わざわざ私が見せる意味が分からない。上を向かせたせいで立ちくらみを起こしてしまった様だし、気の毒だった。褒めてもらう気満々だった上に、助け起こすのも忘れ、カイルの首の裏に見惚れてしまった自分自身にも苛立つ。
二人で深夜の森に行ってしまったのも大変こたえた。例によって寝ているふりをしたけれど、彼らの出入りには気付いていた。エアが夜の森に連れて行ってくれたことなんてないのに。散歩しながら二人で重要っぽい事項を話したのだろう。
彼の足元を走り回っていた時の景色も思い出せるのに、考えていることが分からない。怒りに胃もたれするが、きっと悲しくもあるのだと思う。でも伝える選択肢はない。悔しいのだ。エアを見ていると、私があまりに劣った生き物だと思い知らされる。私の怒りも悲しみも、彼の前では醜いものへと成り下がる。あの人に暗い感情をぶつけるくらいなら、全部胸にしまって機嫌よく過ごした方がいい。こんな狭いところで、私が自分を好きでいるにはそれしかなかった。
だからカイルの前で涙が出てきた時はびっくりした。もう17歳だ。子供じゃあるまいし、強い感情を抱いても、それを表に出すかは自分で決められるつもりだった。よく分からないものに身体の主導権が奪われたようでゾッとしたが、悪いことばかりではなかった。
感極まってしまったあの時。カイルはあからさまに困っていたが、不器用な心配も向けてくれた。困らせて申し訳なかったけれど、私に心を割いてくれて嬉しかった。実はずっと欲しかったのだろう。17年私が得られなかったものを、飴でも渡すかのようにくれたカイル。
だから味を占めて、苛立ちをわざと抑えずに接してしまった。いつぶりだろう、八つ当たりなんてしたのは。王都に行ったら会えなくなるかもしれないから、話せるうちに失礼を謝らなきゃ。
大きな羽虫の死骸が目の前を流れていく。
10年以上、雨の日以外は毎日ここで洗濯をした。流れが穏やかなせいで、嫌というほど水面の自分と見合うことになった。私はエアのようにはなれない。目の大きさが左右で違っているし、髪が硬い。唇も厚く、赤みが強い。
月明かりを煮詰めたような瞳、ふわふわの髪を陽にきらめかせる人は、長く私の模範だった。しかし彼の背に追いついた頃、ああは成れないと悟ってしまった。王都で流行りの髪型を真似てはみたけれど、自分の容姿に興味が湧かず何年もこのままだ。ただ、エアは気に入っているらしい。肩につく程の長さになると背中を向けて座るよう促してくる。
彼に任せればものの数分で全て整うが、前髪だけは自分で切り揃えている。至近距離であの顔を見たくないのだ。老人になんて会ったことがないのに、干物のような自分の隣で今と変わらぬエアが微笑む光景が浮かび、吐きそうになるからだ。
水場では魔法を使うなとずっと言い含められてきた。頼まれても使うわけがない。こんな所では気が散るだけだ。王都に行けたとしても、綺麗な服や可愛い髪型はみんな私を素通りしてエアを愛すのだろう。
「ラグノアは魔術研究院で暮らしてもらう。友達がエアに代わって魔法と常識を教えてくれる。もう話はつけてあるから心配しないで」
王都行きについて説明を求めた時、エアはこう言った。現状、この言葉から未来を察するしかない。エア自身はどうするの?とは聞かなかった。あわよくば一度離れて暮らしたいことも口に出さなかった。分からないことが多いけれど、楽しみだ。わくわくする。先生は、きっとカイルくらい良い人。私と一緒に歳も取るだろう。泣いても許してくれるだろう。
水面に向かって笑顔を作る。目元に違和感はなく、口角も自然に上がっている。大丈夫だ。荷物はまとめてあるけれど、流石にそろそろエアが呼びに来る気がする。早く戻ろう。
自分で作った獣道を辿り家を目指す。数分も歩くと庭が見えてきた。木が生えておらず、食事用机などが置いてあるだけだが、私は庭と呼び抜いた。カイルが屈んで何かやっているようだ。
「ポチくん…いえ36番くん…?に手綱を付けてるんですか?カイルさん」
「惜しい、58番。久しぶりに飛ぶからな、念入りに確認しないと」
カイルは大きな筋張った手で竜の背を撫でた。どうでも良さそうな顔で58番は欠伸をしている。伏せの姿勢のまま今にも寝てしまいそうだ。翼は折り畳まれ、尻尾をぱたぱたさせている。口周りに手綱やらが取り付けられているのに、何て図太さなんだろう。最初は私が世話をしていたのに、怪我が治ったら四足歩行で魚やらウサギやらを狩るようになったし。本当に飛べるのかさえ疑ってしまう。
本でしか見たことがないけれど、背に乗っているのが鞍か。お尻がうまく安定しそうな皮の椅子と、足を乗せられそうなパーツ。馬の場合と大体同じ造りをしているようだ。深い青で染色された皮と組紐に、金属部分は銀。素人から見ても立派だということが伝わってくる。こんなものを使える身分だなんて、
「カイルさんってすごい人だったの?」
「はは、運と度胸だけだよ」
これが謙遜だ。かっこいい。けれど、乾いた苦笑いが気になった。彼の目線は手先に集中している。口元は笑っているけれど眉間に皺を寄せているし、何となく雰囲気が険しいので、作業の邪魔にならないよう退散することにした。謝るのはまた今度だ。
家のドアを開けると、エアに出くわした。
「ラグナ、その格好で行くつもり?」
彼は家の中に引っ込んで私を迎え入れると、壁に寄りかかって首を傾げた。
「どうして?確かに着古してはいるけど」
数日の積み重ねもあり、私は思わずムッとする。擦り切れた巻きスカートと年季の入ったシャツ。エアも似たり寄ったりなんだから、私がめかしこむ必要なんてあるわけないじゃない。
「空は冷えるからね」
肩をすくめる。気取った動きが似合うから腹立たしい。
「カイルのは一人乗りでしょ?私たちは歩きで」
「違う、エアが乗せて飛ぶから」
こともなげに言う。理解に時間がかかった。
「ちっちゃい竜にでもなるの?何色になるか見たいかも」
「嫌だよ、まあ鳥かな。不自然な大きさになるけど」
変身魔法…仕組みだけは知っている。使えるものなら使いたいけれど、リスクに尻込みしてしまった。変身の途中で集中を切らすと、どっちつかずの姿で苦しみながら死ぬらしい。その段階を超えても、動物の身体で理性を保てるかは個々人に依ると。
だけどエアはやる。服を脱ぎ着する延長で。彼がその辺を全裸で歩いていたら、変身魔法の前か後だ。今日は何?と聞くと大体「鹿」「熊」「蛇」「鳥」のどれかが返ってくる。単に水浴びの時もあるが。
「乗り心地は良くしといてよね」
私は鼻で笑った。私が乗れるくらいの鳥なんて想像もつかない。
エアの先導で歩く。森の中だと翼が木に当たって、陸を離れるのに都合が悪いらしい。最短距離で森の外を目指す。特にお気に入りの本と水筒、非常食用の木の実、二日分の着替え。紙とペン。それらの入った麻袋を肩から下げている。服の分それなりの体積はあるが、軽い。周りを見る余裕がある。私の後ろにはカイル、やや遅れて彼の竜。
「あれは…」
カイルが驚いた声を上げた。指す方向を見ると、猪の親子が歩いている。彼は慌て気味に強く手綱を引いたが、予想に反して竜は猪から顔を背けた。
「あれ…興味ないのかお前」
「子供を連れてると凶暴になるからかな?」
「確かに。分かるのかもな」
カイルは黒い皮の手袋を外して甲で額を拭う。耳まで覆うモフモフした帽子、厚い皮の上着に厚手のパンツ、その裾をロングブーツにしまう装い。全身を黒と藍で固め、ベルトの金具などの金属部分は銀で統一。竜とお揃いでかっこいい。
だが見ていると私まで暑くなってくる。
ズタボロだった服の修繕を手伝ったけれど、この暖かさで一式着込んでいるのは正気じゃない。藍色に染色された羊毛の塊は、首元だけでなく上下の裏地にびっしりだ。荷物が増えるから着てしまったのだろう。首元にかけた…ゴーグルと言っていたっけ。上空の風から目を保護してくれるらしい透明な板が曇っている。帽子の下で、結い損ねたもみあげの毛が汗で張り付いている。息遣いも荒い気がする。私の心配は極まった。
「エア!あとどのくらい?」
「うーん二十分」
エアは振り返らずに明日の天気でも当てるような口調で告げる。
「だって!カイル、必要なら私の水筒から飲んでいいからね」
「ありがとう、このくらい平気だよ」
眉を八の字にして微笑まれた。銀の毛が濡れて濃い目の灰色になっている。相当の高さから落ちても死なないくらいだ、肉体が鍛え上がっていれば多くのことに耐えられるのだろう。
木立がまばらになってきた。目が少しずつ炙られている感覚。考えたこともなかったが、直に陽の光を浴びるのは初めてなので、当然かもしれない。目が慣れるまで眩しそうだ。糧が多く届くぶん育ちやすい環境なのだろう、植物の背も高くなっていく。膝くらいまでになると流石に歩きにくい。船は草を編んで浮かべたことしかないけれど、藪を漕ぐとはうまく言ったもの。
「わあ」
ついに森を抜けた。一面、薄緑の草原だ。私たちは小高い場所に立っていて、風の通った場所がひと目でわかる。眩しくて仕方がないけれど、遠くに目を凝らすと家のようなシルエットが小さく固まっている。思い切って空を仰ぐ。薄い青の中にひときわ眩しいものが浮いていた。
「ラグナ、あんまり直視するものじゃないよ」
エアが言った時には遅く、さっきまで陽があった所には黒に赤と緑を混ぜたような闇ができていた。一生このままかと少し焦ったが、繰り返し瞬きしているうちに薄れてきた。エアは私の隣で重心を傾け手を後ろで組み、目を瞑って物憂げに立っている。カイルは、私の前方、少し低くなっている所でパートナーに何やら語りかけているようだ。
ゴソゴソという音にまた横を見やると、エアが上を脱いでいた。脱ぐたびに几帳面に折り畳んで、足元に置いている。私は妙に恥ずかしくなり、畳まれた服を拾って自分の麻袋に突っ込む。結局、エアが脱いだものを片っ端から私がひったくる形になった。準備ができたのか、こちらを振り返ったカイルと途中で目が合ったので気分は最悪だ。違う!のジェスチャーを繰り返した反動で左手が痺れている。何が違うというのか、道中話しておけばよかった。情けなくて涙が出てくる。
「ほんと勘弁してよエア……」
荷物を下ろし、私は地面にうずくまる。時折竜が首だけこちらを振り返る。ふと、彼がずっとこちらを見ていることに気づく。それに反応してカイルもこちらを凝視する。私も隣に視線を送る。黒い塊と目が合った。
(ほらほら立って)
頭の中からエアの声がする。小さい頃、花冠を作っていたら同じことをされて恐怖に泣き喚いたこともあった。必要に迫られているのは分かるけれど、いい気持ちはしない。
カイルたちと色を合わせたのだろうか、太いくちばしまで艶のある黒だ。カラスをそのまま大きくしても、この艶は出ないだろう。しかし瞳まで黒いので、そこだけは普段よりマシだと思った。
私は柔らかい草の感触を楽しみながら歩き、エアは三本指のような脚で跳ねる。互いの翼が届かない程度の距離をとってカイルたちの横に並んだ。それを合図に彼は鞍に腰かけ、手綱を握る。それを待って竜は脚を伸ばした。
(カイル、このままだと冷えるでしょ)
「あ、ああ!?」
私にも聞こえた。カイルは手綱を取り落としそうになっている。
「ごめん、エアってこういうことするの」
「はは、確かに驚きはしたが寒っ!?」
カイルの顔が引きつる。予想はしていたが、大声を出されて多少びっくりした。竜も同じだったようだ、耳が後ろに倒れている。
(体表面の水分を蒸発させたからね、塩でざらつくけど凍えるよりは良いよ)
「確かにそうだなエア、私としたことが気が回らなかった」
と言いつつ、大きな鳥を見てまたギョッとしている。本当にカイルには申し訳なくてたまらない。
「ほら、姿勢を低くしてよ」
私は二人の間に割って入るように、エアの翼をべしべしとはたいて促す。うまく跨がれないので、首元の羽根をつかんで胴体に身体を乗せる。
「ラグノアさん、これ」
しっくりくる体勢を探していたら、ゴーグルを持った黒い手が伸びてきた。カイルはわざわざ竜を降りて渡しやすい角度に回り込んできてくれた。
「ありがとう、いいんですか?」
「さっき眩しそうにしていただろう、これからもっと酷くなるからな。うまく調整してくれ。そう、そこの金具を開いて…」
「ちょっと大きいですけど、この透明な板のおかげですか?辺りが暗くなりました」
頭を一周する布の部分が塩まみれだが、当然口には出さない。こんな技術は知らなかった。カイルであれば目の周りが密封できるのだろうが、私にはどうしても隙間ができる。
「あなたの顔の大きさだと風は多少入るだろうが、景色を楽しむには十分だろ」
私に背中を向けて軽く手を振り、カイルは再び騎乗の態勢を取った。帽子を深く被り直している。
「これだとカイルさんが大変なんじゃないですか?」
「私は慣れてるからいいんだよ」
口角だけ上がっているのが見えた。優しい声色だ。
(準備できた?)
エアは相変わらず脳内に響かせてくる。カイルは頷き、私も首根っこを掴む手に力を込めた。
まずカイルたちが離陸するのを見守る。バサバサとゆっくり宙へと上がっていく。風圧で髪が乱れることも構わず、あの四足歩行のトカゲが浮かんでいることに感動している。思っていたよりも翼が大きい。私たちの家くらい軽々と包み込めそうだ。
垂直方向の上昇がひとまず終わったのか、今度は前方に羽ばたき始めた。風に乗り、見る見る遠ざかっていく。開放感だろうか、竜がキエエエエと超音波のような声を出すのが聞こえる。背後で森のざわつく気配がする。
「ねえエア」
(うん)
私たちの体も宙に浮いた。
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