第8回「救済」
私が仕えていた姫さまは、いつもこの世界を憂いていた。金や力がないものは捨て置かれるなんて理不尽だと、持たざる者は国で保護すべきだと彼女は言う。学のない私には彼女の言っていることの半分も理解できなかったが、およそ一国の姫とは思えない突飛な発想の持ち主だった。そう、貧富の差を無くそうと自ら魔王の生贄になるくらいには。
疲れてしまったのだろう、いくら訴えても取り合ってくれない国王にも民衆の血税で生かされている自分自身にも。そんな折に禁書室で見つけた古い伝承は、彼女の中の最後のブレーキをぶち壊してしまった。
曰く、魔王は王家の血を引く純潔の女を生贄にその国を跡形もなく消し去る魔術が使えるらしい。貧富の差がなくならないなら国ごと消そうとするとは姫さまらしい。そんなこんなで国を出奔し、魔王城に着くまでは驚くほどスムーズにいった。そうして私の姫さまが一張羅に身を包み、辞世の句を詠みあげて華々しく逝ってしまった時にソイツは現れた。勇者と名乗った男は血塗れの姫さまを見とめると魔術構成で動けない魔王を有無を言わせず切り捨てた。
こうして世界は平和に包まれたのだ。めでたしめでたし。死ね
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