第7回「砂」

 大好きだった従姉が死んだ。どこぞの通り魔に襲われて腹部をめった刺しにされていたらしい。ついこの間の結婚式では、生真面目でどこか冴えない旦那の隣でふくふくと笑っていたのに、棺の中にいれられた従姉は青白い顔で静かに目を閉じている。


 従姉と初めて会ったのは祖母の葬式の時だった。当時、喘息だった私は線香の煙で発作を起こし、出棺まで歳の近い従姉と一緒におままごとをして待機することになった。寺の門を入ってすぐ右側に大きなイチョウの木があり、その木陰で直射日光を避けながらおままごとをしていたわけだ。アブラゼミとお経の声をBGMに、何処かからくすねた紙コップに砂を入れ「ご飯ですよ」と従姉に渡す。すると彼女は「美味しい、美味しい」と食べる真似をした。ところが幼い私は従姉が本当に食べたのだと思ってしまって、彼女から「あなたもどうぞ」と手渡された砂のご飯をそのまま口にほうりこんだ。ジャリジャリとした食感と土の匂いが口一杯に広がって、我慢できずに吐いてしまったのは苦い思い出だ。


 火葬が終わり骨と灰だけになった従姉を骨壺に納めると漸く達成感が胸の内に広がった。砂のような遺灰を口に含んでも今度は吐き出したりはしないだろう。

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