第6回「冷蔵庫」
深夜2時。頭のネジが数本は外れている女から送られてきた画像を見て、またかと諦念にも似た嫌悪を感じながら腹の底に溜まった息を吐き出した。なんのことはない、ただ冷蔵庫の中身が見えるように撮られた写真だ。今どき検索エンジンで「冷蔵庫 中身」とでも入力すれば、いくらでも出てくる。このどうしようもない既視感さえなければ。事実、わたしは確実に知っている、あるいは知るはずだったのだ。この冷蔵庫の中身を。
やるせない気持ちでスマホの画面を見つめていると、ことの原因である女から電話がかかってきた。無視をしても鳴り止まないどころか本人がこちらに突撃してくることが過去の経験から分かっているので、仕方なく応答をタップした。
「今回さぁ、年齢の割にキャピキャピしてたから女の趣味変わったんかな?って思ってたけど、冷蔵庫に酒しか入ってないところを見るにやっぱり生活力のないタイプを養ってあげたいその性癖は健在なんだね、安心したわ。」
「うるさい。あんたこそ人の彼女を寝取って証拠写真送りつけるその趣味やめてくれない? 反吐が出る。」
何度目か分からない悪態を最後に電話を切った。今夜は眠れそうにない。
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