第5回「感謝」

 誰かのために何かをすることが好きだったの。私は忌子だったから。


 生まれた時から他人の数十倍の魔力を保有していた私は、この世に産み落とされたと同時に実の両親もろとも故郷の村を焼き尽くしてしまったらしい。育ての親でもあり魔術の師匠でもあるイザベラ先生は、酔っ払うと何時も私を拾った時の話をしてくれる。やれ遠く離れた森から巨大な火柱が上がったので見に行ったら赤子が宙に浮かんで泣いていたとか、やれドカンと大きな揺れがきたかと思うと周囲の温度がにわかに上がっただとか。年々話す内容が大袈裟になっていくので、実際どこまで本当なのかは分からないけれど、深い森の中で先生と過ごす毎日は確かに幸せなものだった。


 魔力の制御を覚えた私は月に数回、王都の献魔力センターに通うようになった。私の有り余る魔力が市井の人の役に立つうえ、少量のお金が手に入るからだ。今日も魔力を献上していると王都のお偉いさんがやってきて、魔族討伐に力を貸して欲しいと言ってきた。なんでも対魔族術式には膨大な魔力が必要らしく、一度で供給できる担い手が今日まで現れず捕捉していた魔族が野放しになっているらしい。私で良ければと頷いて、魔力を込めた瞬間に幸せな日々は吹き飛んだ。

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