第6話
いったいどこまで手を握っているんだろうとリアは思った。こんなに優しく男の子に手を握られたのは生まれて初めてだ。屋敷の廊下を通り過ぎ庭まで来たところだった。レオナールは手を握っているのに気付いたようで
「あ、ごめん!」
とパッと手を離した。握られていた手をジッと見つめているとレオナールは焦ったように聞いた。
「もしかして力強かったかな!?」
「そんなことないです」
「そっか。良かった!これから俺たち結婚するんだって。なんか実感湧かないよね?」
レオナールは苦笑いをした。
「はい、でも一族の発展には欠かせない結婚ですので……」
「一族のためだけど、リアとは仲良くしたいと思ってるよ。その……好きになってもらえるように努力するよ」
「好き?あの、私は魔法持ちの子を産むのが仕事なので、そこに感情はいらないのでは?」
レオナールはとても悲しい顔をして
「そっか、このアルガナントはそういう国だったね……ソティアラは男女差別が少ない国なんだ。女性もちゃんと政治に参加できるし当主にだってなれる。ここよりずっと自由になれるんだよ」
「自由に……?そんなことがありますか?」
毎日殴られることがなくなるの?好きなお花のお世話をずっとしてもいいの?まさかそんな国があるなんて思いもしなかった。
「あるんだよ。もし良ければ俺たちと今日アルガナントを出る?」
「え?」
「父上に話してリアのお父上を説得しないといけないけど、フレール家に嫁ぐのが早くなるだけだよ!」
嫁ぐという言葉が重くのしかかる。今より環境が良くなるかもしれないけど、まだ子供を産むという覚悟が出来ていない。私はまだ思った以上に子供なのだ。
「少し考えさせてもらってもよろしいでしょうか?」
レオナールはにこりと笑って待つよと言ってくれた。とても優しい少年だ。レオナールの妻になるのはとても幸運に違いない。
「レオナール様、ありがとうございます」
「あ、これからは様も敬語もなしでいいよ!ねぇ良かったら街に出て案内してよ!」
「え?今からですか?……あ!」
敬語を使ってしまったと口を手で覆う。レオナールは笑って
「無理にとは言わないけど徐々に慣れていこう。今こっそり出てすぐに帰ってきたらバレない。バレたとしても俺が守ってあげる!」
と言ってレオナールはリアの手を握って走り出した。リアは生まれて初めて心が高鳴った。モラレス邸から街までは近く五分程度で街の中へと着いた。ここは食堂、ここは道具屋、酒場、アクセサリーを扱う店や服を作る店など色々回って案内した。リアは癖がついていて敬語がとれなかったが段々と普通の友達のような言葉が自然と出ていた。
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