第9話 むぅ~
昨日の続きって事で、私が先攻になった。
シャッフルが済み、手札の確認をする。
『島』二枚、『平地』、『熱心な士官候補生』、『珊瑚ウツボ』、『大ダコ』、『復讐』土地カードはばらけてるし、低コストの呪文もある、コレなら問題なさそうだ。
主任はといえば、相変わらず表情をコロコロ変えながら「にゃ~」とか「むぅ~」とか唸ってる。
こんな調子で大会でもプレイしてるのかなぁ、表情で手札が見えてくるような気がして仕方ないんだけど。
「主任、マリガンOKですか?」
「う~ん……ま、なんとかなるでしょ。いいよOKで」
「では、アンタップ、アップキープ無し、『平地』をセットして『熱心な士官候補生』を召喚、ターンエンドです」
『熱心な士官候補生』W クリーチャー-兵士 1/1
「ちゃんとルールガイドは読んできたんやね。じゃ、アンタップ、アップキープ無し、ドロー。じゃ、『森』をセットしてターンエンド」
どうやら土地事故ってワケではないみたいね。でもクリーチャーがいないから今の内にライフを削っておかないと。
昨日、ルールガイドと一緒に、初心者向けのQ&Aの確認をしておいてよかった。
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
『平地』をアンタップして……引いたカードは『ウィザードリックス』だ。
確かこのデッキに入ってる一番大きなクリーチャーだ。
コストも高いので、しばらくは手札に残ってそうだな。
「『島』をセットして、攻撃宣言。『熱心な士官候補生』でアタックします」
「ブロックできないから、通しで。1点でいいかな?」
「はい、いいですよ」
主任が点数を確認してるのは呪文とかを使うことでダメージが増える事があるからだ。
このデッキにはそんなカードは入ってなかったと思うんだけど、クセになってるんだろうな。
「残りライフは19点だよ」
「じゃぁ、『珊瑚ウツボ』を召喚してエンドです」
『珊瑚ウツボ』U クリーチャー-長魚 2/1
「う~ん、初手がいい感じやなぁ。アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
主任の顔が段々真剣になってきてる。
「『森』をセットして、『灰色熊』を召喚、ターンエンド」
『灰色熊』G1 クリーチャー-熊 2/2
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」土地カードと『熱心な士官候補生』をアンタップする。ドローしたのは『栄光の探求者』、これなら勝てる、うん、そんな気がする。
「『島』をセットして……攻撃宣言。『珊瑚ウツボ』で攻撃します」
「ふむ……通しで。2点でいいかな?」
「いいですよ」
「残りライフ17点」
「『島』と『平地』をタップして『栄光の探求者』を召喚、ターンエンドです」
「まずいなぁ、力押しで負けそうやなぁ」
『栄光の探求者』 W1 クリーチャー-兵士 2/2
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
昨日と違って真剣な表情だ。
私がちゃんとルール見てきたからかなぁ、遊びでやってるって感じはしない。
「『山』をセットして、『ゴブリンの滑空者』、『ノーウッドのレインジャー』を召喚。ターンエンド」
『ゴブリンの滑空者』R1 クリーチャー-ゴブリン 1/1
飛行 ゴブリンの滑空者はブロックに参加できない。
『ノーウッドのレインジャー』G クリーチャー-エルフ 1/2
飛行の能力持ちのクリーチャーは、同じように飛行の能力を持ってるクリーチャーじゃないとブロックすることができない。
1点ずつだけど、このままじゃ確実にライフを削られてしまう。
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
また『ウィーザードリックス』だ。残念ながら、これで使えるカードは手札にはない。
アタックしても……死んじゃうだけだもんな。
「ターンエンドです」
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー。『森』をセットして『ブランチウッドの鎧』を『ゴブリンの滑空者』に」
『ブランチウッドの鎧』G2 エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは、あなたがコントロールする森一つにつき+1/1の修正を受ける。
「え~!!」
主任がコントロールしてる森は3つ、『ゴブリンの滑空者』は修正を受けて4/4だ。
しかも私には飛行クリーチャーがいない。
「う~ん、やっぱり勇者様やね、僕。攻撃宣言。『ゴブリンの滑空者』でアタック!ゴブリンパ~ンチ♪」
子供の表情だ……可愛いとも思うけど、なんかムカツク。
「ブロックしようがないんで、通します。ライフは残り16点です」
「じゃ、ターンエンド」
困った、とりあえず土地を一枚引けば、あのゴブリンはなんとかなるんだけどなぁ。
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
『珊瑚ウツボ』だ。土地が欲しいのに……。
「『珊瑚ウツボ』を召喚して……攻撃宣言。『栄光の探求者』と『珊瑚ウツボ』でアタック」
「ふむ、じゃあ『栄光の探求者』を『灰色熊』で、『珊瑚ウツボ』は『ノーウッドのレインジャー』でブロック」
「なにかしますか?」
私には使える呪文が手札にない。主任は何か持ってるんだろうか?
「いや、そのままでいいよ」
「じゃあ、ダメージを解決しますね」
お互いダメージを与え合って、4体のクリーチャーはそれぞれの墓地へ落ちた。
場に残ってるクリーチャーは、主任が『ゴブリンの滑空者』私は『熱心な士官候補生』、『珊瑚ウツボ』の2体だ。
「ターンエンドです」
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー……おぉ♪森をセットして『破滅のロッド』をおくね」
『破滅のロッド』4 アーティファクト
3T クリーチャー一体がプレイヤー一人を対象とする。
破滅のロッドはそれに1点のダメージを与える。
森が一つ増えたので、『ゴブリンの滑空者』は5/5になった。
マナが残ってないから、破滅のロッドはこのターン使われる事はないけど、どんどん主任のペースになってる。
「攻撃宣言、『ゴブリンの滑空者』でアタック」
「にゃあ、ブロックできないから通しです。5点でいいですか?」
「うん、いいよ♪」
……その爽やかな笑顔がなんだかムカツク。
「残りライフは11点です」
「ターンエンド」
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
♪引いた!『平地』だ♪
「平地をセットして、攻撃宣言。『珊瑚ウツボ』『熱心な士官候補生』でアタックです」
「うん、通すしかないからね。3点でいいかい?」
「いいですよ」
「ライフは残り14点だよ」
「土地を全てタップして、『復讐』を対象は『ゴブリンの滑空者』です」
『復讐』W3 ソーサリー
タップされているクリーチャー一体を対象とし、それを破壊する。
「あ~!僕のプリチ~なゴブリンちゃんがぁ」
主任は嘆いてるが、呪文の効果で破壊されたゴブリンは墓地におちた。
「ターンエンドです」
それに、どう見てもそのゴブリンは可愛くない。
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー。ふむふむ……山をセットしてターンエンド」
あれ?なんで破滅のロッド使わないんだろ?
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
『翼膜のゴーレム』……ここでコレかぁ。
「攻撃宣言、『珊瑚ウツボ』と『熱心な士官候補生』でアタック」
「ブロッククリーチャーがいないから、破滅のロッドを起動、対象は『珊瑚ウツボ』で」
「そのアーティファクトズルイですよ」
「いやいや、そういうカードやしな」
「珊瑚ウツボは墓地に落ちてしまうんで、1点でいいですよ」
「ライフはあと13点」
「『大ダコ』を召喚してターンエンドです」
『大ダコ』U3 クリーチャー-タコ 3/3
「タコキター!」
「主任?」
「いや、なんとなくね。アンタップ、アップキープ無し、ドロー。『火山の鎚』をその『大ダコ』に」
『火山の鎚』R1 ソーサリー
クリーチャー一体かプレイヤー一人を対象とする。火山の鎚は、それに3点のダメージを与える。
「せっかく召喚したのにぃ」
「まさに、たこ焼きやねぇ♪で、ターンエンド」
破滅のロッドを起動する為のマナは出せる状態だ。
これじゃ『熱心な士官候補生』はすぐに墓地に落ちるだろうなぁ。
むぅ~。
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
『復讐』だ。でも、主任はクリーチャーをコントロールしていない。
今欲しいのは土地なのに。
「攻撃宣言、『熱心な士官候補生』でアタック」
「破滅のロッド起動、対象は『熱心な士官候補生』で」
「墓地に落ちました」
「ふふん♪」
「『翼膜のゴーレム』を召喚してターンエンド」
『翼膜のゴーレム』4 アーティファクト・クリーチャー-ゴーレム 2/3
3 翼膜のゴーレムはターン終了時まで飛行を得る。
「ゴーレムキター!」
「……主任」
「なんか反応してくれたらいいのに」
「どう反応したらいんです?」
「う~ん、それも困るか。アンタップ、アップキープ無し、ドロー。『灰色熊』を召喚してターンエンド」
さっきまでは真剣な顔してて格好良かったのになぁ。
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
『平地』だ、これでやっと5マナだせる。
「『平地』をセットして……う~ん、ターンエンドです」
翼膜のゴーレムで攻撃してもいいけど、スルーされてしまうと主任のターン、灰色熊をブロックできるクリーチャーがいない。
灰色熊にブロックされれば、熊は墓地に落ちるけど、私がわかるような事するとは思えないし。
手札に残ってるのは『ウィザードリックス』2枚と『復讐』の3枚。
主任は次のドローで手札が3枚になる。
「エンド前に破滅のロッド起動、対象は高瀬君で」
「ライフは残り11点です、主任の番ですよ」
あのロッドに毎ターンダメージ与えられるとなるとマズイなぁ。
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
主任の表情は相変わらずコロコロかわる。
「攻撃宣言、灰色熊でアタック」
え?ゴーレムでブロックしてしまえば、灰色熊は墓地に落ちる。
・・・…破滅のロッドを起動されてしまうとゴーレムは死んでしまう。
でも、灰色熊も死んでしまうならいいのかな?う~ん、ブロックするべきなのかなぁ……通すとライフは9点。
…・・・手札に召喚できるクリーチャーはいないし、このデッキは直接ダメージを与えるような呪文は入っていない。
通しておいて、『復讐』で墓地に落とすのが正解かな。
「通しでいいですよ」
「2点でいいよ」
「じゃ、残りライフは9点です」
「『火山の鎚』、対象を高瀬君で」
「!?まだあったんですか!!……残り6点です」
「ふふん♪ターンエンド」
でも、ブロックしてたらゴーレムが墓地に落ちてたって事だから、コレで良かったのかな?でも主任使ってきたって事は???なんでだろ?
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー」
『平地』だ。これをセットしても『ウィザードリックス』は召喚できない。
「『平地』をセットして『復讐』を『灰色熊』に」
「あう~、ひどいよ高瀬君」
「さっき、私の『大ダコ』に『火山の鎚』使ったじゃないですか。攻撃宣言、『翼膜のゴーレム』でアタック」
「通すしかないからね。2点でいいかい?」
「はい」
「これで残りライフ11点だよ」
「ターンエンドです」
「じゃ、エンド前に破滅のロッド起動、対象は高瀬君で」
「あと5点です」
「アンタップ、アップキープ無し、ドロー。対象を高瀬君で『溶岩の斧』」
『溶岩の斧』R4 ソーサリー
プレイヤー一人を対象とする。
溶岩の斧はそのプレイヤーに5点のダメージを与える。
これでライフは0点だ。
「主任、もう一回!」
「高瀬君、負けず嫌いでしょ?」
そう言いながら主任はクスクス笑ってる。
「あと一枚土地が来てたら『ウィザードリックス』が召喚できてたのになぁ」
『ウィザードリックス』U6 クリーチャー-ビースト 6/6
「僕の残りの手札は『森』が二枚だったんだよ。さっきのドローで『火山の斧』を引いたからね」
「じゃ、ゴーレムで攻撃したら主任負けだったんじゃないですか?」
「うん、本当は『灰色熊』で攻撃する前に『火山の鎚』でゴーレムを落としておかないとまずかったんだよね。『溶岩の斧』引いたからいいけど、先に高瀬君がもう一体クリーチャー出してるとマズイ事なってたかな」
「クリーチャーが出なかったら?」
「破滅のロッドで先にライフ削りきってるから勝てるよ」
「むぅ~」
「ま、僕がプレイミスしてるのは確かだけどね」
「主任でもするんですか?」
「そりゃするよ。大会ではそうしないように注意してプレイするんやけどね」
「私でも大会とか参加できるんですか?」
「ショップ主催の小さな大会から、予選とか勝ち抜かないと出れないような大きな大会もあるからね。高瀬君がどんな大会に出たいかにもよると思うし。その前に自分でデッキ構築したりしてみないとね」
「主任はいろんな大会に参加してるんですよね?」
「うん、もう随分と長い事遊んでるからね。小さな大会から大きな大会まで色々と参加してきたよ」
そう話す主任の顔はとっても楽しそうだ。
「対戦してる動画も見たんです」
「そっちも?見ててもよくわからなかったでしょ?解説ついてるけど、カード知らないと状況もよくわからないだろうし」
「職場と違う主任の顔が見れたし、インタビューで照れてる姿も見れましたから」
あ、顔が赤い、照れてる。
「そんなトコまで見たの?帰りたい、ものっそい帰りたい」
「??ものっそい?」
「あぁ、ものすごくって意味やね。恥ずかしいし照れ臭いし、会社で真面目にやってたのに、素の自分を知らないトコで見られてるのはめちゃくちゃ恥ずかしいよ」
「あぁいうのは断れないんですか?」
「参加する際に同意してるからね」
「そうなんですか?」
「ネットでリアルタイムで放送してるからね。インタビューも上位に残ると答えないといけないし」
「見ました」
「インタビューも?」
「はい」
「……経歴なんかも?」
「関崎さんと同期って聞いてたんで、主任が25歳だったのにも驚きましたし、会社経営ってなんですか?」
「関崎さんも僕も中途なんだよね。関崎さんが入社は1週間くらい先だったかな」
「会社経営って?」
「僕ね、会社立ち上げてるんよ。丸投げしてるから名前だけ代表責任者だけど」
「適当に答えてるのかと思ってたんですけど、ホントだったんですか!?」
「!……ま、嘘つきたくないし、課長達も知ってるしね」
その手があった!みたいな顔を一瞬した。でも話してくれるみたいだ。
「そうなんですか?」
「申告の関係があるしね。そもそも業務上の情報や利益供与等々に引っかからないなら、副業は認められてるし」
「それなりの給与は出してるけど、バイトしたかったらしていいって入社時に言われたのは冗談だと思ってました」
「昔は禁止してたみたいだけど、フリマアプリとかでも上手く使うとバイトするくらいは稼げるしね。申告しないとダメだけど」
「でも会社経営って丸投げ出来るもんなんですか?」
「タカシが頑張ってくれてるからね。クレープ屋の運営等々は丸投げだもの。僕は出資するだけでいいって言うたんやけどね。未成年が代表だと色々と面倒な部分もあるから名前だけ代表責任者なんよ。まぁ、何年かしたらそういった諸々の権利関係もタカシに譲渡するつもりでいるけどね」
「タカシ君のクレープ屋さんだったんですか!?」
「まぁ、色々あってオープンに向けての手続きだったり、レシピ考案でボビーに手伝ってもらったり、なんやかんやで代表責任者やね」
「そんな流れでなるようなもんじゃないと思うんですけど」
「事実は小説よりうんにゃらかんにゃらやね」
冗談で言ってるわけじゃないみたいだ。
「まぁ、いい勉強にはなったよ。役所関係の書類とか、金融関係もね。そうそう明日課長に呼ばれるけど、変に緊張しなくていいからね」
「え!?何かミスしてましたか?」
「そういうのじゃないから大丈夫だよ。営業補佐も慣れてきたみたいだし、そろそろ次のステップにって話だよ。金曜、課長に帰り際に呼ばれてさ。FNMあるから早く帰りたいって毎週言ってるのにヒドイと思わない?」
「FNM?」
「毎週金曜にあるイベントやね、仕事が押さないようにスケジュール組んでるから、ほぼ毎週参加してるんよ。カジュアルな感じのイベントだから参加しやすいイベントかなぁ。課長も知ってるのに引き止めるんやからヒドイよね」
「その話、私聞いても大丈夫なんでしょうか?」
「月曜の朝、出勤してきたら伝えるつもりやったし、月曜の方が良かったらそれまで黙ってるし、どっちがいい?」
少し楽しそうな顔になってきた。
なんとなくわかってきたけど、主任はこういう悪戯じみた事が好きなようだ。
「心の準備がしたいのもありますけど、そこまで聞いたらモヤモヤするんで教えてください」
「何件か担当顧客を持たせるようにって話をされてね。僕の顧客をいくつか引き継いでもらうことになったんよ。補佐から担当営業になってほしいって話やね。なんで明日からは、しばらく同行してもらう事になると思うからよろしくね。補佐としてやらなくちゃいけない仕事に関しては、並行して引き継ぎしてもらう形になるんかなぁ。その辺の調整は課長が考えてるとは思うけど、呼ばれた時にでも確認したらえぇんちゃうかな。ってか、休みの日に仕事の話になってごめんね」
「いえ、色々聞いたのは私の方ですから」
主任の顧客って、クセが強いオーナーが多いって聞いてたんだけど、私で大丈夫なのかなぁ。
「同行して、引き継ぎ終えたら丸投げなんて事はしないから大丈夫だよ。前任者として困った時には相談になるし、ってか一応上司やしね。こんな感じなんでちょっと申し訳ないよな気もするけど」
「そんな事ないですよ。昨日今日で主任に対してのイメージは変わりましたけど」
「悪い方向じゃないとえぇんやけどね」
「悪い方向なんかじゃないです。ギャップがあり過ぎてアレでしたけど……」
「アレって?」
ピリリリリ ピリリリリ
主任の携帯が鳴り響く。
「ボビーからだ、用意できたみたいだから降りようか?」
「出なくていいんですか?」
「用事があるか、出来上がってて鳴らしてるんやから、下に行けばいいさ」
数回鳴ると携帯は静かになった。
「ほらね。さ、待たさないように降りよ」
そう言うと、主任は手をさしのべる。
主任の手を握り立ち上がる。なんだか照れ臭い。
「主任、こういうのいつもやってるんです?」
「こういうのって?」
「その……手、ですけど」
「しないよ。そんな相手もいないしね」
「期待していいんですか?」
「うん?期待?」
……天然なのかなぁ。
「なんでもないですよ。早く降りないと」
「あのね、高瀬君……」
ピリリリリ ピリリリリ
「なんですか?」
意地悪く聞き返してみる。
「……ボビー待ってるから降りよか」
……気になるのに。
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