ヒロインのイベント邪魔しちゃいましたか?
第16話 魔法学院入学しちゃいました
どうやったかは知りたくないが、私は高等科1年に、光は中等科1年に姉弟としてイスラ王国の魔術学院に留学した。
学院の寮から高等科を目指していると、後ろから呼ぶ声がする。
「アリス!」
振り返ると同時に後ろから抱き締められて、引っくり返りそうになった。
「アリシア! 何でここに?」
アリシアはぎゅっと抱きしめている腕に力を込め、顔を首もとに埋めてスリスリしている。
会うたびに抱きつくのやめようか……。
「私も入学することにしたの」語尾にハートマークが見える。
どうやって? とは聞かなかった。どうせアランの仕業だろう。
国外追放された元令嬢が他国の王立学校に入れるはずがない。
「また、学校に通えるなんて嬉しい! いっぱい恋話しようね」
「うっ。恋話はちょっと、苦手かも。遊びに来た訳じゃないし」
「え――っ! せっかく悪役令嬢じゃなくなったんだから。学校生活楽しまないと! アリスも仕事ばっかりしてたら枯れちゃうよ」
アリシアは妙にテンションが高い。よほど浮かれているのだろう。
国外追放される前は、シナリオ通りとはいえ、我儘で気の強い令嬢だったのだ。楽しい学校生活、ましてや恋話には縁がなかったに違いない。
ちょっとくらいは聞いてあげよう。
さて、クラス分けはどうなったかな?
寮生は入寮日に、自宅からの生徒も事前に魔力量を測定して、4クラスに分けられる。
1.2組は成績順、3.4組は貴族と平民に別れているのだ。
寮にアリシアはいなかったので、自宅から通うのだろう。
あまり目立たぬように、それでいてリリィ様や第二王子と同じクラスになるように、測定値を調節するのは面倒だった。
「やったぁ! アリスと一緒のクラスよ」
アリシアは飛び上がって喜んでいる。
取り敢えず、第二王子とリリィ様も一緒だ。手加減しすぎて、2組になっていたらと心配していたのだが、ギリギリ1組でほっとした。
それにしても、アリシアは全く手を抜かなかったようで、王子の次に名前がある。
「アリシア、目立ちすぎじゃない?」
「あれ? 手を抜いたんだけど、ヤバイ?」
うーん、平民でこの美貌。目立つなという方が無理である。
むしろ、注目を集めてくれると私は動きやすかも。
矢面にたってもらおう。
「アリシアが目立つのは問題ないかな」
「あっ! ちょっと嫌な感じ! 私を盾にこそこそ影で動こうとしてる」
鋭い。
「ちょっと隠れ蓑にしようと思っただけで……」
しどろもどろ言い訳していると、「ふふふ、冗談よ。アリスってホント可愛い」
またギュットされる。
「近いから、 無駄にギュッてしないで」
その綺麗な顔が近いと、ドキドキしちゃうのよ。
断じて、私はノーマルだから!
なおも笑いながら、アリシアは離れない。そして、ヒソヒソと耳元で呟いた。
「リリィ様には内緒ですが、間近で、悪役令嬢とヒロインが対決するの見るのは楽しみですね」
「アリシア!? あなたまた悪役令嬢役やるの?」
思わず大声で聞いてしまう。
「嫌ですねアリス。私はもう悪役でも令嬢でもないですよ。ほら、本物がいるじゃないですか」
アリシアは人だかりの方を指差す。
そこにはリリィ様と公爵令嬢のマリー様、そして第一王子がいた。
うわぁ! 攻略本と一緒だ!
輝く金髪と青い目。ニコリと笑う薄い唇。透けるような肌にすらりと長い足。
ザ、王子様だ。
ん? でも何か物足りない。
もっとキラキラオーラがあると思ったけど、以外に地味だな。
「アランの方が王子様っぽいかもね」
思わず呟いた言葉に、アリシアはチラリと私を見た。
何?
「ふふ、わざわざ寝た子を起こす趣味はないので、内緒です。鈍感なアリスも好きです」
鈍感? 第一王子について何か見過ごしてる?
もう少しじっくり観察しよう。
第一王子はマリー様の腰に手を回し仲良さそうに話し、リリィ様は距離をおき、引きつった顔で微笑んでいる。
「なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになる。私が協力してなんて言ったから、あんなのに付きまとわれて」
「悪役令嬢が王子様を味方につけてヒロインを虐めるなんて卑怯ですね」
アリシアはわくわくを隠さず、目を輝かせている。
「アリス、ここは二人に絶対ざまあ体験してもらいましょう」
アリシアは私の腕をつかんだまま、リリィ様の方に引きずって行く。
「近くで見物……いえ、観察しましょう」
今、見物って言ったよね。
三人の周りには遠巻きに人だかりができていた。
後ろの方で覗き込むと、どうやら王子が、入学式が始まる前、リリィ様に控え室に来るよう誘っているようだった。
第一王子は3年生で、歓迎の挨拶をするらしい。
リリィ様は断っているが、しつこく誘っている。
第一王子の横では、笑顔なのに目が怒っているマリー様がしっかりと第一王子の腕をつかんでいた。
「凄いですね! 朝から目が離せないです」
アリシアは楽しそうだったが、私はリリィ様を見て近いうちに助けるからねと去っていく背中に謝った。
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