第9話 人間という生き物の悪性に関する考察

思うに。

人間とは。星にとって、自然にとって。


不治の病。不可避の災害。末期癌。意志を持った災禍。知性あるイナゴのようなものでは無いだろうか。


発展の為に、山を切り崩し、海を汚し、生態系を歪め、自然を破壊しあまつさえ同族同士で殺し合いさえしてみせる。その為に自然界にない毒を生み出し策謀を練り上げ鉄器銃器を生産し、果ては無関係な無辜の人々さえ惨殺してみせる。


領土を奪うため?文化が違うため?


違う。違う。殺し合いにも戦争にも、大義名分や正しい理由などない。今までに1度もあったことなどない。


人が人を害するのは。嫌うのは。虐めるのは。奪うのは。騙すのは。殺すのは。


単に『相手が邪魔だったから』。『目障りだったから』。『なんかムカついたから』。『何もかもを奪いたくなったから』。『楽しそうだったから』。


理由なんてそんなものだ。そこに政治やら経済やら宗教やら、醜い人間の文化や事情を挟み込んでわざと話をややこしくしている。


まるで自分達の行いに言い訳でもするかのように。


そうして。あまりにもあっさりと。


最終的に全ての犠牲も破壊も殺戮も悪行も。


『やむを得なかった、必要な事だった』と締めくくるのが人類の考え方であることは歴史が証明している。


何たるおぞましい有様か。


最も知恵と理性がある生き物だから人間は栄えたのか?否。断じて否である。


人間の最大の特徴であり個性、他のどの生き物より突出した特性。


それこそが人を人を足らしめんとする証明である。


それは即ち『悪意』だ。


尽きることの無い悪意。


栄えるため。楽をするため。領土を広げる為。文明を進める為。


斬った。刺した。踏み潰した。犯した。奪った。撃ち殺した。沈めた。焼いた。毒を盛った。騙した。裏切った。売り渡した。


あらゆる悪業を人間は成し尽くした。


あらゆる命を無分別に壊し殺し穢し尽くした。


だが。それでもまだ足りない。飽き足りない。


食い足りない。奪い足りない。犯し足りない。壊し足りない。殺し足りない。


まるで人類は底無しの、奈落の落とし穴のようだ。


誰も彼もが自分達の醜さを、穢らわしさを、おぞましさを、罪状を、業を忘れて


都合の良い未来、都合の良い筋書き、都合の良い理想だけを見て綺麗に着飾り踊り狂っている。


断言しよう。


破壊も、殺戮も、差別も、汚染も、犯罪も、迫害も。この世界からは永遠に無くならない。


人間はそれを止められない。そもそも止めるつもりすらない。だって楽しいから。仕方ないから。そうしたかったからそうする。そういう生き物だ。


雨が降れば傘をさす。


虫が目障りだったから潰す。


まるで息を吐くように、ごく自然に、それが常識であるかのように。


人間は悪意を振りかざし掲げる生き物だ。


どれほど賢く、気品よく、美しく、正しく振る舞おうが。鍛え上げようが。育とうが。


その醜き獣性は絶対に治らない。


何故ならそれこそが人間という生き物の証明に他ならないからだ。


人間とは悪を悪と理解しておきながらそれを楽しむ生き物だからだ。


愛も、夢も、友情も、信頼も、理想も


全てが脆弱なるまやかしだ。嘘だ。悪だ。罪だ。


それらは全て人間の醜い本性を隠し飾り立てる免罪符、煌びやかなメッキに過ぎない。


人間とは。


悪魔より狡猾で残忍で嘘つきで惨たらしくて。


神よりも無慈悲で気まぐれで無責任で横暴で。


この世のありとあらゆる生き物より毒々しく禍々しく汚らわしい生き物だ。


私には分かる。


私は人の姿形だけを。器だけを与えられ。


中身が何も無く、どうしようもなく不出来で不器用で欠けてしまった出来損ないにすらなれなかった成り損ない。贋作にすらなれなかった生まれついての失敗作の笑い物だったから。


だからこそ、この極致に至った。


いずれ全ての人々が苦しみ抜いて死ぬだろう。


いずれ何もかも無惨に滅びるだろう。


いずれ人類は、人々は。


自分達の選んだ都合のいい未来を選ぶ為に殺し尽くしてきた歴史、敗者、犠牲者達の恩讐によって滅ぼされることだろう。


積み重ねた負債がやがてあらゆる未来の可能性を真っ黒に塗り潰すだろう。


負債は。罪状は。裁きは。やがて訪れる終末の雨となって人類の全てを殺し尽くすであろう。


『つぎは おまえたちの ばんだ 』


底無しの奈落の落とし穴から


さざ波のような。静かで。冷たくて。柔らかい。


地獄の産声が 聞こえた気がした。


…………なんて。あまりにもバカげた古臭い、昔の終末系ホラー映画みたいな夢を見たので、ちょっと自分なりの言葉回しを書き加えて文字に起こしてみた。


我ながらくどくて、面倒で実に厨二臭い酷いシナリオだな、と思いつつ苦笑する私であった。


ともあれ、私のこの取り留めもない下らない文が誰かの胸に少しでも響いたなら嬉しい。


私は少なくとも昔から本気で人間をそういうものとしか思っていないし、コロナウイルスや現代人を見ていてまさしくこれこそが真理だとも思っている。


人種差別も。自然破壊も。戦争も。犯罪も

。ありとあらゆる悪意が。


世界から100年経とうが1000年経とうが無くならないと断言出来る。


むしろ文明が栄えることでより巧妙に、より悪辣に、よく残酷に、より破滅的になると言い切れる。


救おうとすればするほど、救いから遠ざかり。


全てを救うためという煌びやかで美しい正義はやがて皮肉で醜い独善的な自分の正義を貫くというエゴに成り果てる。


人類とは栄えれば栄えるほど、より破滅的な未来に躍進するものなのだから。


完。

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ADHDと自閉型スペクトラムを抱えた欠陥人間の妄想推察 夢遊猫 @nekoyume4894

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