1話

「スリリ…」


誰かの声がする。私は、でも、体が重く、起き上がれない。


「スリリ!」


べジッ!!


驚いて目を開ける。


「なに気絶してんのよ!」


ああ、また倒れたのか。


目の前にいるのは、コクトという21歳の女性。見た目は子供に見えるが、リリスの王国の王女様だ。私の教育係でもある。


今は格闘の修業中なのだが、コクトが強すぎるのか、私が弱すぎるのか…。


「また避けれなかったのね!何回言ったらわかるの?」


「コクト、厳しすぎるよ。」


話に割って入ったのは、シュンラン。私の旦那さんだ。


「何言ってんの!スリリが弱すぎるから悪いのよ。」


「帝国が迫ってきて焦るのは分かるけど。」


そう。王国と帝国は戦争を開始した。今は戦時中だ。


「あんた、何回も言うけど、帝国生まれのくせに、王国の一員として認めてやってるだけ感謝しなさいよ。」

コクトは言った。


「私は王国の人間…。」

私はふとつぶやく。


「まさか、まだ自分を帝国の人間だと思っているんじゃないでしょうね。いい加減今を認めなさい。あんたは帝国に捨てられたの。嫁いだって意味、分かってる?」


「よく、分かりません。」


つい言ってしまった。


思い切りコクトに蹴られ、私は激痛で倒れ込んだ。


シュンランが駆け寄る。


その後の記憶はない。

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地下の異世界 ルーフェシア @RU-fesia

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