2. 天使
この"天国"には階級制度がある。
"お父さん"と呼ばれるいわゆる神様を絶対的なトップにして
上級天使、中級天使、下級天使、一般平民職員ががピラミッド状に存在している。
そして天使職は世襲制である。
天使は命がなくなることがないので
長期にわたる在職ののち、「ちょっと休みたい」とかそういう理由で職を離れることがあるにはある。滅多にないが。
世襲制と言ったが、天使同士の交配はまれである。
一方気晴らしに下に降りて人間を相手に子を授ける天使が一時あとを絶たず
清廉さを売りにしている天国としては
「正当な理由なしに現世に降り立つことを禁止」せざるを得ないという経緯があった。
そうして時が経ち(現世でいう時間の流れと同等ではないが)天国において首脳陣の顔ぶれにいいかげん変化がなくなったころ
「そろそろ新しい風を入れたい」とお父さんが言い出した時は
上級天使たちは眉をひそめたが中級、下級天使たちは一斉に色めき立った。
自分たちが上級に抜擢される可能性を想像して。
ところがお父さんの考えは違った。
「平民職員のなかから天使職へスカウトせよ」
お父さんの言うことは絶対。
思いつき、気まぐれの言動で
天国はもとより当然現世においても大きな問題をもたらしてしまうこともしばしば。
しかしお父さんは気まぐれではあるが
その源は圧倒的な"善"なのである。
それは誰でも知っている。
上級天使たちの中でははたして誰をスカウトするのかというところでしばしの議論があったわけだが長老の一言で最後は決着した。
"くじびきにしよう"
お父さんの気まぐれには気まぐれで答える。
そういうわけで
今ここに座っているミキが天使候補生として選ばれた。
どうやって選ばれたのかは重要なことではない。
文字通り、神のみぞ知る。
適当に引っ張ってきた名前だとしてもそれはミキが知るべきことではない。
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