三章 長谷川高介
第1話 潜入
「けっこうでかいッスね」
「県の
「ジュマ!」
私の左肩付近に浮いている
平日の午前十時くらいではあるッスが、ここは
太陽がない空間ッスからね、ふつーに夜空ッス。
街灯や商店の灯りが街を照らし、行きかう自動車も当たり前にライトを点けているんで、日中という感覚は全くないッスね。
それでも、ここで暮らす住民には日常。
精神体とはいえ、大人は仕事をして学生さんは学校へ行っているッス。
そして、私が立つこの場所は、警察の魔法版ともいうべき探理官さんが務める探理局の前。
五階建てのビルで、横は三十メートルくらいあるんじゃないッスかね。
一見、特別な感じはないッスが、魔法防御処理はかなりのもんだと思うッス。
まあ、そんなことを言ったら、ここの隣りが県警察本部だし、ちょっと行くと県庁もあるッスからね。
魔法対策が整ったところにいるのは間違いないッス。
「────それじゃ、中へ入るッスね」
「ええ、そうしましょう」
「ジュマ!」
声をかけ、私たちは探理局の中へ入っていく。
ガラスのドアを開けた先の印象は────、市役所。
長椅子に座って順番待ちをしている一般の人が十人ほどいて、右側に窓口業務を担当するお姉さんたちが手際よく書類をさばき、パソコンを操作しているッス。
いちおう魔法に絡んだ相談も引き受ける公的な機関ッスからね。
お爺さんや、三十代くらいの主婦、作業服姿のお兄さんに、胸の大きな黒髪ロングの女子高生さんも堂々といられるわけッス。
世界夜でウィルスの心配はないッスが、皆さん現実世界にならってマスクをつけ、距離をおいて、感染の対策をしているッスね。
と、私たちが行くのは三階にある捜査課。
そこで私は、私を世界夜へ追いやった元凶、
それは────力に目覚めた者を排除しようとする感情に魔が関わっている可能性があるからッス。
特に過剰な、高介氏を筆頭に。
だけど神様たちは自分の持ち回り分で忙しいうえに、調べるにたる材料がなくて様子見のままになってたみたいッス。
例えるなら、短気で怒りっぽい人だけど罵声を浴びせたり暴力を振るっているわけじゃないからいいって感じッスかね。
いや、私、実際にスピールを向けられて撃たれてるッスけど。
とにかく、文姫さんのはからいもあって一度、調査・確認することになったってわけッス。
「────肩に乗るわね」
「了解ッス」
浮かびながら移動していた文姫さんッスが、私の左肩に、ちょこんと足を揃えて座ったッス。
「ジュマ!」
そしてジュマが、ぴょんと私に飛び込んできたのをキャッチ。
そのままヌイグルミのように抱きかかえたッス。
これはセキュリティ対策。
この世界夜で私や文姫さん、ジュマも、住人たる精神体には見えないッスが、セキュリティ関連の物には感知されてしまうッス。
そこで文姫さんが建物の神様・宅神と連携し、神霊の接触物だから大丈夫、という
階段とエレベーター手前の床にコンピューターと魔導工学による防犯装置が設置されているッスが────。
人として存在していないのでスルーってわけッス。
そんで住人である精神体は
私、今日はオレンジ色のビスチェに黒のデニムショートパンツ、ショートブーツなんで、絶対見るはずなんッスけどね。
文姫さんやジュマのこともあるんで、エレベーターで密になるのは避け、トコトコ階段を上がって三階へ。
「ここッスね……」
「ジュマ!」
私の顔に向けてジュマが右手を上げると、私には魔導具のロックグラスがかけられたッス。
「捜査課……、奥ッスね」
表札? でいいんッスかね。
学校の一年一組みたいなやつに『捜査課』と書かれているのを見つけたッス。
廊下の雰囲気も、窓があって部屋があってッスからね、ついつい学校を連想してしまうッス。
そして、あそこに長谷川高介氏が居る……。
「そこで何をしている」
「!?」
不意に声をかけられ、振り向くとそこには見覚えのある中年男性がいたッス。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます