二章・城跡戦

第1話 城跡・開夜

「ほへ―、こんな感じになるんッスね」


 茂みから呟く私。


「ええ、あんなのに居座られたら人々も安心できないわ」


 左横でそう答える文姫ふみひめさん。


 黒髪ロングの髪型が似合う、着物姿をした身長十五センチくらいの神霊しんれい


 人間でいえば三十歳くらいに見える大人な感じ。


 姫だけに上品な雰囲気があるッス。


 そして私の足元にはジュマがいるッス。


 ────私たちがいるのは世界夜セカイヤにある城跡。


 城跡なんで、当然、殿様のお城はなく、石垣だけが残っていて、現実世界では公園として開放されている場所ッス。


 八メートルほどの高さがある石垣の上に位置する本丸の区画。


 その北東側の茂みに身を隠しているッス。


 そして、私たちがのぞき込む視線の先にいるのは六体の夜獣やじゅうさん。


 いつもなら夜獣さんはスーツを着た獣人なんッスが、この六体、甲冑を着ているッス。


 兜こそかぶらないで獣の頭を出したまんまッスけど、いかにも武士といったかんじ。


 全員、あぐらをかきながら向かい合って円を描くように座っているんで、会議をしているように見えるッス。


 しかも、キツネ、クマ、ヒョウ、ライオン、オオカミ、トラと、一体一体違う頭をしているッス。


 特にクマの夜獣さんは僧兵の格好をして、弁慶さんを彷彿ほうふつさせるッスね。


「新型ウィルスの感染拡大で、もよおし物が中止。人々の不安や恐れがこんな形で現れてしまったの。滅すれば、その分、恐れも解消されるのだけれど……」


 少し嘆くように言う文姫さん。


「大丈夫ッスよ。そのために私を呼んだんでしょう? 安全確実にいくッスから」


 私は励ますように答えたッス。


 いつもなら世界夜の街中をパトロールして、夜獣さんを見つけたら浄化・殲滅。

 

 その報酬である神貨しんか都市神とししんが支払っているッス。


 しかし今回は城跡を守護する神霊である、文姫さんからの依頼。


 特殊な状況ということから、一体あたりの殲滅に百万神貨で、相手の戦力分を加味しての上乗せもあり。


 つまり六体いるんで、最低、六百万神貨は稼げるって計算ッスね。


「じゃあ、早速、仕掛けるッスよ―」


「え? もう?」


「ここからは動かないッス。イメージは、狙撃ッスね」


 驚く文姫さんをよそに、愛銃・コルトパイソン357マグナムのスピールカスタムを構える私。


 距離、ざっと三百メートル。


 ロックグラス型の魔導具をかけているんで夜でもよく見えるし、望遠鏡みたいに遠くのものを見ることもできるッス。


 パイソンのシリンダーに装填された金聖魔法で、夜獣さんを燃焼、浄化させるッス。


「まずはキツネさんを────」


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