ある一人の探理官による手記

 気になるところがあるのでここに書き留めておく。


 我々、探理官たんりかんは国民に害をもたらす魔法の使用を取り締まり、魔物を討伐してきた。


 その特殊すぎる任務ゆえ警察とは別の扱いになっているわけだし、殺人の許可、武器・魔法の使用が許可されていることでも、それが分かる。


 探理官は対象の殺害か捕縛か速やかに判断し実行するのだが、最近、安易に殺害しているのではないかと思う。


 基本的には、違法な魔法の使用などで人間に戻れなくなった者や、元から魔物として生まれた者を始末している。


 魔物はもっというと、熊などの獣と同じく駆除といってもよいだろう。


 だが時として、一般人の中から本人の意思に関係なく力に目覚めてしまう者がいる。


 膨大な魔力であったり、魔法の作り方だったりする。


 あらゆるものへの戦い方が覚醒したという未確認情報もある。


 そのような者は確保し、容体ようだいの安定化やサポート、力の封印をすれば日常に戻れると思うのだが、上は排除の方針をとろうとする。


 つまり、誰かを傷つけたわけもなく、物を破壊したわけでもなく、秩序を乱したわけでもないのに、力をもったというだけで殺すというのだ。


 私自身が、その違和感を感じたのは一年程前、ショッピングモールでのことだ。


 魔法犯罪から弟を守ろうとした高校生が力に目覚め、そいつらを無力化したのだが、上司は高校生を攻撃した。


 私は慌てて制止したが、その高校生は力に飲まれたのか行方不明になった。


 上司の行動は正当とされ、行方不明になった高校生は力の暴走による事故として処理された。


 それを知るのは私と上司、消えた高校生の三人だけ。


 泣き叫ぶ弟さんの顔を思い出すたびに胸が痛くなる。


 その高校生の名前。


 たしか野八彩のばちあや


 もし生きていれば十八歳になっているだろう。

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