「届かない声と本当の別れ」〈リラ×まろん〉

リラ side


「ねぇ、リラちゃん聞いてよ、今日はね……」


そう言って彼女は、毎日僕の元にその日にあったことを話に来る。


僕の好きだったお菓子を持って毎日。


彼女の話す内容は、


「今日は、川沿いの花が綺麗に咲いてた」


だとか、


「リラちゃんにこの前おすすめされた本、面白かったよ」


とか、バラバラ。


その言葉に


『もう、そんな季節なんだね』


とか、


『あの本読んでくれたんだ、気に入ってくれたようでよかったよ』


とか、返しても、その声は彼女には届かない。


彼女は30分くらい話すと、「また、来るね」と言って、僕に背を向ける。


石の上に座りながら、その後ろ姿を見送る。































紫陽花に囲まれた墓地は、僕のためだけに作られたようで、


とても綺麗で


鬱くしい。







『僕のことなんて、早く忘れてね』


彼女には届かない、小さな小さな独り言…………


の、はずだった。





「忘れないよ、だって大好きだもん」


墓地の入口で、僕の方を振り返り、微笑みながらそういう彼女。




本当に


本当に彼女には叶わない。














『ありがとう』





そう言って、僕は静かに消えた。






梅雨のこの時期には珍しい、青く、広く晴れた空。



それは、僕たちの本当の別れを表しているような気がした。

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